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#ネタバレ 映画「あのこは貴族」

「あのこは貴族」
2020年作品
あるいは、やまとなでしこ
2021/3/17 22:23 by さくらんぼ (修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

デジタル撮影ではなく、まるでフィルムのような質感の画像でした。

そして、純文学を映画化した、みたいな感じです。

昨今の作品ではないみたいに真面目。

内容は違いますが、真面目さにおいては、ふと、小津監督の映画「東京物語」を連想したほどです。

映画「東京物語」の原節子さんも、映画「あのこは貴族」の門脇麦さんも、貴族してましたね。

お二人とも、日本の希望です。

★★★★☆

追記 ( フォーレ《レクイエム》全曲 ) 
2021/3/17 22:25 by さくらんぼ

なんとなく、映画の余韻がこの曲を選ばせました。

フォーレ《レクイエム》全曲 クリュイタンス指揮/パリ音楽院管

( 2015/03/11 制作者 OperaTaiyaku オペラ対訳プロジェクト )

追記Ⅱ ( プリンセス ) 
2021/3/18 8:35 by さくらんぼ

「  同じ空の下、

私たちは違う階層(セカイ)を生きている ー。 」

(  映画「あのこは貴族」チラシより抜粋  )

「市井の人」である私は、貴族の方々の生活を知りません。

私が知っているのは、幼いころに遊びに行った、近所の町工場の社長さんのお宅ぐらいです。

そんな私は、TVで時々拝見する、某国のプリンセスがまとっておられる空気感を、この映画「あのこは貴族」のヒロイン・華子(門脇麦さん)から連想したのです。

そう言えば、昨今のプリンセスも結婚問題に悩んでおられたご様子。

(失礼でしたらお許しください)もしかしたら、この作品は、それを見守っている国民の気持ち、空気感が生んだのかもしれないと思いました。

追記Ⅲ ( ある意味「黄金の中庸」でもある ) 
2021/3/19 10:04 by さくらんぼ

ヒロインの身分は中層階の貴族ですが、内面は最上階の貴族なのです。

それぐらいの力量になると、相手と勝負する前に、着席する前に、勝負がついてしまうようです。

まとっている格の違いが、意識せずとも、一挙手一投足に出てしまうのでしょう。

そのような無言の勝負が、あちこちにちりばめられた作品でした。

追記Ⅳ ( 「さりげない」という武器 ) 
2021/3/19 17:23 by さくらんぼ

例えば、義理の兄の紹介で知り合った弁護士・幸一郎(高良健吾さん)をめぐって、時岡美紀(水原希子さん)と華子が三角関係になり、共通の知人であったバイオリニストの逸子(石橋静河さん)が中に入って対決する場面など、普通は修羅場と化してもおかしくないのですが、華子は無意識なのか計算ずくなのか、唐突に「お雛様」の話題を持ちだし、腹芸にも近い手法で無血開城してしまうのです。

よく考えてみれば、「お雛様」と結婚は無関係ではなく、女子にとっては本能的な最終兵器だったのかもしれません。

それから、幸一郎の親に初めて会う場面では、幸一郎の家族が待ち構えている宴席に遅れて入ってきますが、時代劇のような所作で相手に隙を見せません。ほとんどの女性は(男性の私も)あの段階で試験に落ちてしまいそうですが。

追記Ⅴ ( 「螢草 菜々の剣」 ) 
2021/3/20 23:02 by さくらんぼ

タイトルに「あるいは、やまとなでしこ」と書きました。

しかし、私の考えるところの「やまとなでしこ」とは、けっして弱い女ではありません。

映画「東京物語」の原節子さんも、映画「雨あがる」の宮崎美子さんも強い女でした。

この映画「あのこは貴族」の門脇麦さんも、箱入り娘ではありましたが強い女です。

映画「あのこは貴族」冒頭のエピソード。

お正月に恋人を家族に会わせる予定だったのに、頼んだ彼に突然捨てられてしまった華子は、ぼろぼろになっても、平然を装って家族の宴席にかけつけ、キチンと挨拶をしたのちに、涙も見せず、事務的に「捨てられたこと」を報告するのです。

駆けつけるときにはタクシーを利用していましたが、運転手が「お正月はよそ者が居なくなって道が空きます。(今残っている)お客さんは東京生まれでしょ。いいなぁ、お正月の会食なんて…」みたいに話しかけても、まったく相手にしません。

相手にしなかったのは、家族に何と話そうかと思案中だったためでしょうが、それだけでは無いと思います。品のない会話の誘いには乗らないのでしょう。

タクシーのシーンは中盤にもう一度出てきます。

義理の兄の紹介で弁護士・幸一郎とお見合いをした直後、自分から「また、合っていただけますか?」とお願いし、OKをもらって帰る道すがら、運転手に「こんなことがあるのかしら」と話しかけました。「あるんじゃないんですか」と運転手。

華子は直感で相手を選びます。

その他にも、知人から品のない男を紹介されたときは、トイレに緊急避難しましたが、トイレも汚いことが分かると、一人そこを逃げ出して帰宅したのです。

ヒロイン・華子の内面は、ある意味、武士のごとくだと思いました。NHK・TVドラマ「螢草 菜々の剣」のヒロイン・清原果耶さんも連想するような。

追記Ⅵ ( 華子とジェルソミーナ ) 
2021/3/21 6:47 by さくらんぼ

(  映画「道」のネタバレにも触れています。 )

>ヒロイン・華子の内面は、ある意味、武士のごとくだと思いました。NHK・TVドラマ「螢草 菜々の剣」のヒロイン・清原果耶さんも連想するような。(追記Ⅴより)

そうそう、一目惚れから熱烈な恋愛をし、めでたく弁護士・幸一郎と結婚しましたが、すぐに離婚を切り出したのも華子のようでした。我慢強いですが、不必要な我慢はしない女です。

映画の終盤、華子はバイオリニスト・逸子のマネージャーとなったことが明かされます。マネージャーの仕事の詳細を私は知りませんが、世間知らずの弱虫では務まらないと思います。

そこに偶然現れたのが政治家になった幸一郎です。幸一郎は華子がマネージャーをしていると知り驚きました。そして二人の態度から、まだ二人には未練が残っていることが感じられました。

結婚中は華子に冷たかった幸一郎でしたが、政治家になり弁護士時代とは違った世界にとまどい(きっと敵も増えた)、今さらながら、心の通い合う、本当に信じられる味方が欲しいと思ったのかもしれません。

幸一郎は秘書らしき人にせかされ、立ち去りますが、名残惜しそうな顔で「後で連絡する」と言葉を残していきました。

私は「復縁話をしたいのだな」と思いました。華子が他人のをマネージャーをするぐらいなら、自分の心のマネージャーになって欲しいはず。映画「道」のラストで、ザンパノがジェルソミーナに抱いた感情を連想させる思いが、今、幸一郎にもあるのだなと思いました。

この映画「あのこは貴族」は、貴族、プリンセス、そしてフェミニズムにもつながっていくのでしょう。

追記Ⅶ ( 見つめられる華子 ) 
2021/3/21 9:36 by さくらんぼ

時岡美紀(水原希子さん)は慶応義塾大学に入りましたが、実家が貧しく仕送りが出来なくなったので、親から大学をやめて欲しいと宣告されました。

苦労して入った大学をやめたくないので、何とかバイトでと思い、クラブで水商売もしましたが、無理だったようで、とうとう退学することになってしまいました。

売り出し中のバイオリニストの逸子(石橋静河さん)は、あるパーティーの席で、人目を盗んで、わざわざ東京タワーのように飾られたクッキーの頂上にある一個を取って食べました。代わりに花を一輪置いて。

その様子を遠くから見ていた時岡美紀は、同士と思ったのか、少し微笑んでから、近づいて話しかけました。

二人とも、今は空虚かもしれませんが、頂上を目指していたのです。

そして、そんな空虚な二人が熱く見つめる先には、華子がいたのです。

映画「あのこは貴族」のチラシにある、輪郭だけの逸子と時岡美紀の絵は、それを表現していたように思いました。

そして、映画のラスト近く、偶然に華子と再会した幸一郎も、また空虚だったのでしょう。

追記Ⅷ ( 所作が意味するもの ) 
2021/3/22 10:05 by さくらんぼ

例えば、「一芸に秀でていれば、多分それはお金になります」。

だから、「一芸に秀でていれば、あまり他の事は気にしなくても良い」みたいな価値観が増えてきました。

その価値観は人間を道具してしか見ていない気もしなくはありませんが、それで良いと世間様の大勢が判断するならしかたありません。

しかし、この映画「あのこは貴族」を観ると、華子は教養もあり、やらせたら仕事も出来そうですが、貴族であるためか、人間的にも上品で所作も美しいのです。

(  ちなみに、華子が嫁いだ先は、華子の実家よりもはるかに上流階級なので、華子を小ばかにしていました。結婚式のシーンでは、記念撮影が終った直後を注視すると、相手方の親族の多くはすぐに華子に背を向けており、一人ぼっちになった華子の心に吹いたすき間風が、痛いです。

それだけでなく、後日、離婚話を切り出した華子を、相手方の親族の女性の一人は平手でぶったのです。

そんな事を見ていくと、華子の方が実質的に相手方よりも上品でした。 )

それを見ると、やはり上品になることを放棄しないのは、良いことなのかもしれないと思えました。

ちなみに私は、若い頃、仕事で外回りをしたとき、訪問先では偶然にお茶会が開かれておりました。「あなたもいかがですか」と言われましたが、不作法なので逃げ出しました。

あの時、お茶を楽しみ、皆さまと会話を楽しめる器量が欲しかったですが、それは今でもありません。

追記Ⅸ 2022.6.2 ( お借りした画像は )

キーワード「上品」でご縁がありました。美しい和菓子ですね。少しだけ上下しました。ありがとうございました



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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