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#ネタバレ 映画「ロスト・イン・トランスレーション」

「ロスト・イン・トランスレーション」
2003年作品
視点
2004/5/29 17:02 by 未登録ユーザ さくらんぼ


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

二組の夫婦が登場する。一組は若夫婦。夫は仕事で忙しく、出張先の東京までついて来た新妻は一人ホテルに取り残される。しかし妻の寂しさを夫は知らない。

もう一組は中年夫婦。子供が生まれると妻の気持ちは夫から子供に移るらしい。夫は見捨てられたような寂しさを味わうが、妻は夫の寂しさに気づかない。その上仕事でも違和感があるようだ。

二人とも物質的には恵まれていても心は満たされないのである。そんな孤独な者どうしはやがて惹かれあう・・・

そして舞台は東京である。

外国人から見た東京は物質的には豊富で何一つ不自由は無いが、やはり心まで満たされることは難しい場所として描かれる。西洋と比べて、異文化、異言語、豊かで、混沌として・・・と上げていくと東京は外せない候補になるのだろう。

東京は舞台として二人の孤独感を観客にリアルに感じさせるために登場する。映画「プリシラ」でドラァグ・クイーンたちの気持ちを観客にも理解しやすいように砂漠を登場させるのと同じ手法だと思う。

映画はその手法が成功したのだろう。各賞を受賞している。しかし、私たち日本人が観ると心の半分は日本人側からの視点で映画を観てしまうので、きっと西洋人たちよりも感動は薄いのかもしれない。

しかし、それでも不思議と彼らと一緒にトーキョーという名の異国へ旅をしたような気分になってしまう。観て良かった。ときに異国での孤独は、心の傷を癒す薬となる事もある。ラストに流れる懐かしの日本の歌もうれしい。

追記 (  「ロスト」から )
2004/5/30 11:58 by 未登録ユーザさくらんぼ

この作品は究極の人間関係である夫婦を取り上げ、そこに起こる「ロスト」を描いていると思います。夫婦でさえそうならば、それ以外の人間関係はすべて含まれるという訳です。

そしてモチーフである「ロスト」が映画のあちこちに散りばめられています。それらが映画を生かすことに貢献しています。通訳が正確には訳さないエピソードもそのワンピースでしょう。それらの中の一つが舞台を異国に設定する事だと思います。

しかし、それらは同じモチーフで関連しているので当然無関係ではありません。ですから二次的には東京を描いているとも言えるのだと思います。

東京は映画「ブレードランナー」などを代表として、混沌とした近未来の世界の象徴の様に描かれる事が時々あるようですので、ソフィアが選んだ理由も偶然ではないのでしょう。

日本で暮らす私が主人公達の哀しみを少しでも理解できたとしたら、それは自分自身の国内外の一人旅の孤独な経験を思い出していたからだと思います。もちろん民族的なアイデンティティの喪失も感じないわけではありません。

東京の混沌。混沌はアイデンティティの喪失の状態です。そして混沌はルールが無い状態で、それは美しくありません。何処かで聞いた話ですが、ルールが有るからこそ殴り合いのボクシングも美しいスポーツなのです。

東京を「変な街」だと言った主人公達。だから彼らはルールに反しない映画のラストを飾るのだと思います。あの秘密のセリフはきっと美しいセリフであると思いたいです。

追記 ( 不思議なレストラン ) 
2015/9/12 15:36 by さくらんぼ

駅裏に、気になるレストランがあるので行ってみました。

混むといけないので、お昼、早めに入りました。

店内は小学校の教室の1.5倍ぐらいあり、そのゆったり感の中、昔のコーヒー専門店にあるような、焦げ茶色、木製でアンティーク調の、わりと、がっしり感のあるテーブルとイスが置いてありました。チェーン店のカフェにあるようなライトなイスとは対照的な感じ。

まだ、がら空きです。さて、どこに座ろうかと見渡して、片思いの人を見つけたときのように、動揺しました。

フロアの片側、壁に面したイスが、病院の待合室にあるような、背もたれ付きの長椅子だったのです。極端な話、スペース的には、ゴロリと横になることもできます。おもわず、仕事終わった的リラックス感、が湧いてきました。いや、風化しかけた懐かしさ、と言っても良いかもしれません。

この気持ちをどう表現したら良いのか、本当はどこからやってくるのか、まだ十分な分析は済んでいませんが、今までの人生でも、こんな経験はめずらしいです。

今の段階で分かっているのは、長椅子から起因する感情と、コーヒー専門店にあるようなイスからのそれと、事務所に近いような飾り気のない店内の空気と、それらがチグハグ(失礼)に混じりあって、かつて経験したことの無い、舞台効果を生んでいたらしいということです。

そうそう、オープンしてそんなに年月が過ぎてはいないのに、どこか、古くなった改装前の喫茶店みたいでもあり、掃除した倉庫みたいでもあります。

でも、ここにかぎらず、軽々には改装しないでほしい。なじみの喫茶店でも、改装して、快適になったためしはありませんから。

(ネタ帳 8/10)


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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