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#ネタバレ 映画「プリシラ」

「プリシラ」
プリシラ (映画) - Wikipedia
1994年作品
ラスベガス
2003/8/18 by未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

なぜ砂漠にバスが走るのだろうか。映画「マッドマックス」ではないが、どうして砂漠にモンスターマシンが必要なのだろう。ここにはバスは広いという以上の理由があるようだ。

どこかで読んだ話だが、人は砂漠のような圧倒的な大自然の中では精神のバランスを崩すものらしい。そうならないためには強力な人工物を持ち込む必要がある。それがこの映画の場合、一つ目はバスなのかもしれない。この事例の延長線上には誰もが知っている派手なラスベガスがあるらしい。もちろんラスベガスの誕生理由はそれだけではないだろうが・・・ここに少し映画のヒントが感じられる。

映画はそのバスに乗って、オーストラリアの広大な砂漠や荒野を、巡業のために走る3人のドラァグ・クイーンの物語である。

彼らは普通の人間社会では、どうしても色眼鏡で見られてしまう。しかし彼らはドラァグ・クイーンとしてしか生きられない。むかし何処かで「人間砂漠」という言葉を聞いた事があるが、そのドラァグ・クイーンたちの心を、砂漠をバスで旅する彼らに重ねて表現している。

このアイディアを取り入れることにより、彼ら特有の気持ちが、万人に疑似体験できることを目指しているのだろう。私たちはドラァグ・クイーンでなくても砂漠の持つパワーを感じられるからである。事実、彼らが砂漠で派手な衣装を着けて、大自然に対抗するように演技する様は、私も爽快感を得た。同じ事を都会のど真中でやってもあれほどのアピール感は無いだろう。これが二つ目である。

そしてラストがやってくる。彼らの一人は長年別れて暮らしていた息子と再会する。しかし最愛の息子の前では自分を隠さなければならないと思っていた。息子は真実を知らないらしい。最愛の息子の前さえも「砂漠」だったのか。しかし映画は、砂漠ではどう振舞えば良いかをすでに語ってる。後味の良い傑作となった。

追記 ( ラスベガスとは似て非なるもの ) 
2015/11/16 7:14 by さくらんぼ

広大な埋め立て地の、広大な工場地帯。民家など見えません。

そこに通る市バス一本。

私はそれに、埋立地にある小さな植物園に行くため乗っていました。

誰も歩いていない道路と、延々と続く不愛想な塀、それに灰色の工場群だけが見えます。

そんな中に、途中ぽつんと、観覧車のある小さな小さな遊園地、がありました。

太陽の光がさんさんと降り注いでいます。

でも、遊園地の出すオーラは、工場群の沈痛に、完全に飲み込まれていたのです。閉園しているわけではありませんが、人影も見えません。

色はカラフルですが、工場群と同じように静謐をまとっています。

この「ハイコントラストかつ異様な気」をなんと表現したら理解してもらえるのでしょう。

最後の決め言葉を一晩考えましたが、どうにも、上手い表現が見つかりません。

ただ、あのとき、そこで降りてみたい気持ちと、一目散に逃げだしたい気持ちが、同時に起こったことだけは確かでした。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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