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#ネタバレ 映画「ピンク・クラウド」

「ピンク・クラウド」
2020年製作 ブラジル
2023.2.4

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

「2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影された本作は、一見、新型コロナのパンデミックを予言したかのような作品」だと言われているようです。

物語は、致死性のピンク・クラウドに襲われ、ロックダウンで病んでいく家族を描いています。

私はコロナ過前の作品だとは知らなかったので、てっきり、真正面からコロナ過を描いていると思ってしまいました。

でも、前述したように2017年の脚本だと分かると、この作品は、預言でもなく、真正面からコロナ過を描いているのでもなく、又、違う景色を見せてくれます。

鬱々とした重苦しい作品ですが、その奥にある世界を探ってみるのも面白いかもしれません。

追記 2023.2.4 ( 仮想現実への警鐘 )

①映画の冒頭、桟橋のような場所に、男と犬がいます。そこに海からピンク・クラウドが男を襲いますが、犬は元気です。10秒で人間だけが致死するとは、常識で考えられるウイルスでもなく毒でもないようです。

②映画のラスト、ロックダウン中の家の中、リビングに砂をまいて疑似ビーチを作り、水着になってVRのゴーグルをつけ、疑似・日光浴をする母。息子は砂浜のすぐ外でノートPCを使い勉強中。母はうっかりバケツの水をこぼしてしまい、水がPCにかかり怒る息子。

①②は符合しているように見えます。

海は「女」の記号であり、陸は「男」の記号、ビーチは両者が出会う場所の記号であるのは、映画でときどき描かれていることです。

それを加味して考えると、海からやってきたピンク色の雲とは女性の事だったのかもしれません。

だから人間の男は強い影響を受けても、犬は無事なのでしょう。

ピンク・クラウドが街を襲い、ロックダウンになると、夫婦は喧嘩を始めます。ストレスがたまるのでしょう。

そして家族全員、仮想現実に逃れるのです。

( ちなみに夫はと言えば、別室のTV電話の風俗で、自涜行為をしています。子どもはPCで勉強をしますから、皆、仮想現実に逃げているわけです。)

つまり、映画「ピンク・クラウド」とは、リアルに背を向け、人間を避け、仮想現実に逃避する事への、警鐘を鳴らした作品だったように見えました。

追記Ⅱ 2023.2.4 ( たぶんハッピーエンド )

この家の子供は、ロックダウン中に生まれ、外界を知りません。やがて、反抗期になって母に口答えをするようになると、母は「リアルを知らないくせに」と怒ります。すると息子は「お母さんだって仮想現実にいる」みたいな反論をするのです。

その後、母は、窓を開けて、バルコニーに一人出ます。ピンク・クラウドがゆっくりと近づいてきます。

そこで映画は終わりますが、中盤にある「政府は死者数を発表しなくなった」や、ラストの「リアルを知らない」というセリフ、そして、ピンククラウドは「女」の記号であることを加味すると、たぶん母は死なないのでしょう。

そして、コロナ過がデルタ株からオミクロン株に変化してきたリアルを知っている私は、「もう、男も死なないかも」と思えたのでした。

追記Ⅲ 2022.2.4 ( 映画「居眠り磐音」

では、チラシのキャッチコピー「その雲に触れたら10秒で死ぬ」とはどいうことか。

意外にも、その一例は、映画「居眠り磐音」のクライマックス、「花魁道中」にあるのかもしれません。

『 磐音との縁談が壊れてしまい、追いだされるように生きていた奈緒は、父・母と生きる生活費のために吉原に入り、(武士の娘としての稀有な品格と、野良犬同然になったハングリー精神で)花魁にまで上り詰めます。

手紙でそれを知った磐音は、吉原へ逢いに行きますが、花魁姿の奈緒を見て、転ぶように地べたに這いつくばります。高下駄で円を描くように歩いていた奈緒は、足を止め、ゆっくりと振り返るのです。ここにも円がありますね。

そして、地べたの磐音を見た奈緒は、匂い袋を取りだして、様々な感情のこもった微表情をするのです。

私には「武士の娘が、円月殺法で武士を斬った」と思えました。何も言わず一人で逃げだした上に、迎えに来るのが遅すぎたから。 』

( 映画「居眠り磐音」追記Ⅱ by さくらんぼ より抜粋 )

追記Ⅳ 2023.2.4 ( オーガズム )

>( ちなみに夫はと言えば、別室のTV電話の風俗で、自涜行為をしています。子どもはPCで勉強をしますから、皆、仮想現実に逃げているわけです。)(追記より)

自涜行為は、妻が窓越しに、隣の若者を誘惑してやらせるシーンもありました。

ダメ押ししてますね。

では、監督の考える「10秒で死ぬ」とはどういうことか。

ふと思ったのですが、監督の描いた「10秒」とは、「男性のオーガズムの持続時間」の意味ではないでしょうか。

追記Ⅴ 2023.2.5 ( 記号化された男・女のシンボル )

映画「ピンク・クラウド」のチラシを見ていたら、描かれている先のとがったノッポの家が、男性のシンボルに見えてきました。その頂上付近の雲も意味深です。

そして、3階の左にある写真。妻が窓にある穴(パイプ状になっている)の中から、封印を解いて、配給の食料を取り出すシーンです。そして夫婦で10秒カウントをします。このパイプ状の穴は女性のシンボルなのでしょうね。

追記Ⅵ 2023.2.5 ( 映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」 )

『 映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」を観ていたら、池のほとりで、主人公・ウィル (マット・デイモンさん)にショーン(ロビン・ウィリアムズさん)が語る名言がありました。

ポエムのように美しく長い言葉ですが、要約すると、「君には本から得た知識しかない。だから、経験から得る自分の気持ちは語れない」という話でした。』

( 映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」私のレビュー追記Ⅱより抜粋 )

行きすぎた仮想現実の弊害というものは、VRに限らず、本でも、映画でも起こりえるのですね。いわゆる「書を捨てよ、町へ出よう」なのです。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)







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