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#ネタバレ 映画「おゆきさん」

「おゆきさん」
1966年製作 日本
2016/5/15 9:16 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

これは映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の追記Ⅱ~Ⅲとして書いたものを加筆再掲したものです。あちらもぜひお読みください。

追記Ⅱ ( 余談ですが、映画「おゆきさん」 )
2016/5/15 9:16 by さくらんぼ

六子は口減らしのために集団就職したと思っていました、だから故郷には帰れないと。

また、淳之介は帰る家が無く、知人宅をたらい回しにされていたようです。

ここから、和泉雅子さん主演、映画「おゆきさん」のレビューを余談としてここに記しておきます。同時代を生きた、親の無い子の物語として。

「知識は経験するまで本当には理解できない」。

主人公「おゆきさん」こと「祐紀子」が、新品のセーターを着たまま日本髪を結うシーンがありました。その時、後からではセーターが脱げないことに気づいた祐紀子は泣きだしてしまったのです。

「知識は経験するまで本当には理解できない」。似たような格言も有ったような記憶ですが、これが主題でしょう。

「祐紀子」は幼いころに両親を亡くし(たぶん戦争で)、おばさんに育てられました。このおばさんが、一見して品性卑しい曲者っぽいのです。

祐紀子はそんなおばさんからイジメられないよう「人に気を使う」人間に育ちました。

頭の回転も速い子でしたが、中卒か、よくても高校までしか出してもらえなかった。そんな祐紀子は映画館を学校代わりに育ちました。それは様々な人生勉強をさせてくれました。

でも、いつしか祐紀子も、品性こそ良いですが、おばさんと似た者同士の「上から目線の人間」に育っていたのです。「しっかり者になろう」という気持ちがそうさせたのでしょう。

そんな男勝りの祐紀子も、新婚初夜には、どうしてよいかわからず泣きべそをかくことになります。

映画の舞台となった1966年ごろ、親もいない若い女性が性教育をまともに受けることは無かったのでしょう。

たとえ頭で知っていても、処女性が尊ばれていた時代には、未経験の娘が多かったと思われ、さらに「上から目線の人間」だった祐紀子は、もう泣くしかったのでしょう。

知識が役に立たないのは、奉公先の大学教授の父も同じでした。

日ごろは「上から目線」でしたが、やっぱり祐紀子や実の娘の結婚話をめぐってのドタバタ時には、スマートには振る舞えなかったのです。

この映画はそんなお話。

重鎮・笠智衆さんも出てくるモノクロ映画ですが、映画「東京物語」とは違い、肩の力を抜いて観ることができる佳作です。DVDにもなっていないようですが、現代にあっては、もっと評価されても良いのでは。

主演の和泉雅子さんは、子どもの頃にTVで良く拝見していました。とても元気が良く、カラリと明るい雰囲気の方、とのイメージでした。

しかし、映画「おゆきさん」を観て、初めて彼女のファンになったような気がします。

たぶん、彼女がひんぱんにTVで活躍されていたときには、私はまだ幼すぎたのだと思います。

今、おじさんになった目で、あらためて18歳の彼女を観ると、宝石のようにキラキラ輝き、AKBでセンターが取れそうな正統派アイドル、そんな雰囲気の女優さんだったのだ、と分かりました。

追記Ⅲ ( 起承転結レビュー、映画「おゆきさん」 )
2016/5/15 9:26 by さくらんぼ

ここまでが「起承」です。

これは2016年を生きる私の感性で書いたものです。あのような、おばさんに育てられた女の子は「可哀そう」という感性です。

ここからは「転結」に入ります。

でも、映画が公開されたのは50年も前の1966年(物語の舞台になったのも同じころ)です。今とは時代が違います。

参考に挙げると、1958年当時を描いた傑作に、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」がありました。あの作品には「縁もゆかりもない茶川親子」が描かれています。

すると1966年当時の世相でも、ホームレスにもならず、親戚のおばさんに育ててもらえたのは「不幸ではなく幸福だった」のかもしれないのです。

すると日本髪のシーンは単に技術的な問題で、「自分で結ったからいけないのです。だれか詳しい人に相談すれば失敗せずに済んだかもしれない」のです。

大学教授にも実の娘の縁談がありました。娘が独断専行するのが不満な教授でしたが、最初からいちいち親が口出ししなくとも、あるていど娘を信用してまかせても良いのです。

そして、祐紀子の新婚初夜のこと。泣き出した祐紀子に電話で「安心して彼にまかせない」と言う教授。

この「時には人に頼りなさい」の気持ちが、助け合いの気持ちが、この映画の主題であり、貧しい時代に生きる庶民の知恵なのでしょう。「頼り下手の私」へのお説教のような映画でもありました。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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