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#ネタバレ 映画「太平洋ひとりぼっち」

「太平洋ひとりぼっち」
1963年作品
スターチャイルドになった日本
2013/9/28 21:40 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

1968年に米国で初公開された映画「2001年宇宙の旅」のラストには、謎を呼ぶ「スターチャイルド」が出てきましたね。

しかし、それより5年早い1963年に日本で公開された映画「太平洋ひとりぼっち」のラストには、すでに「スターチャイルド」が出ていると言ったら、皆様は驚かれるのではないかと思います。

それでは、簡単にお話します。

「1940年大会の開催権を返上した日本及びアジア地域で初めて開催されたオリンピックで、また有色人種国家における史上初のオリンピックでもある。歴史的には、第二次世界大戦で敗戦し急速な復活を遂げた日本が、再び国際社会の中心に復帰するシンボル的な意味を持った。(Wikipediaより。)」

これは、ご存知1964東京オリンピックのことですね。

そして、このオリンピックを、新生日本のシンボルと位置づける見方も、今ではオーソドックスなものとなっています。

そして映画「太平洋はひとりぼっち」は、1962年に堀江謙一さんが、ヨットによる、太平洋横断を成し遂げた体験記を映画化したものです。

「映画は時代を映す鏡」とか言いますが、映画「太平洋ひとりぼっち」も、1964東京オリンピック当時の日本の空気を映し出したものであると考えるのも不自然ではないでしょう。

海外旅行の自由化も1964年でしたから、まだ個人の宇宙旅行、いや海外旅行が困難であった1962年当時、堀江さんは木の葉のごとく小さな宇宙船、いや風力ヨット(エンジン不搭載)で、宇宙のごとく大海である太平洋を単独航海し、その果てに、外国というよりも、まだ当時の感覚的には、たぶん星ほどに遠い、遥かなる米国にたどり着いたのです。

そして、当局に確保され、とりあえず日本領事の家に泊められます。そのときのシーンからが問題です。堀江さんが風呂に入ります。あの風呂は、母の子宮、お湯は羊水の記号かもしれません。

そして、風呂から上がった堀江さんは、ベッドにうつ伏せになり、即、爆睡します。日本から国際電話が入っても、もう夢の中でした。あれは、ベッドに乗せられた新生児の記号でしょう。

つまり、この映画は、苦悩の果てに誕生したばかりの新生日本を、記号化された堀江版スターチャイルドの誕生を使って描いたものだと思うのです。

いつもカッコいい裕次郎さんが三枚目を演じていて、「えっ!」と困惑する異色作。とても新鮮です。

★★★

追記 ( 彼の「花嫁」 ) 
2018/5/1 9:00 by さくらんぼ

昨日のFM放送で、「はしだのりひことクライマックス」の大ヒット曲、「花嫁」(1971年)が流れていました。

子どもの頃、わが家では買ってもらえないような、友人宅にあった立派な「日立」のステレオで、そのシングル盤を楽しんだのが、昨日のことのようです。

そこから流れでた、甘いシロップで味付けしたような歌声は、他では聴いたことがないものでした。

土曜の午後の楽しい思い出。

あれから半世紀近くたちます。

しかし、昨日聴いた音は、昔、友だちが鳴らしていた美声には遠く及びませんでした。

オーディオにも、技術の進歩に伴った、音の流行があります。

それどころか、音にも一期一会があるのかもしれません。

あのステレオも、もう売ってはいないのですから。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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