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#ネタバレ 映画「今日も嫌がらせ弁当」

「今日も嫌がらせ弁当」
2019年作品
怪獣母ゴン!?
2019/5/25 9:05 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

学生時代、私も弁当を持って、何年も通学しました。

父も弁当通勤でしたから、母は毎朝二つ作っていたことになります。

今のように冷凍食品とか、惣菜の豊富なスーパー、電子レンジも無かった時代、おかずのほとんどは手作りだったはず。それでも毎日同じではありませんでした。

ですから、子ども心にも、(年に数回は)「この弁当に応えるためにも、しっかり勉強をしなければ…」と思ったものです。これ本当。

でも、思っただけで、勉強はいつも一夜漬けをしただけ。そのせいで成績は良くありませんでした

結局、半生を振り返って、一番勉強したのは、クルマの運転免許と、趣味のアマチュア無線の試験だったと気づきました。

ところで、この映画「今日も嫌がらせ弁当」。

内容はよく知りませんが、嫌がらせを受けても、その弁当を食べなければ腹ペコになってしまうという、育ち盛りの娘には酷すぎる不条理。こういう世界観のある喜劇!?は好きです。

チラシを見ると、フライパンを持って仁王立ちになっている母(篠原涼子さん)を、下から見上げる娘(芳根京子さん)がいます。

あのカットは、まるで、怪獣を見上げるヒロインのよう。

追記 ( 怪獣母ゴン!? ) 
2019/6/28 16:43 by さくらんぼ

映画「今日も嫌がらせ弁当」は、アイディアは斬新ですが、映像は奇をてらわないTVのホームドラマ的な安心感がありましたし、シナリオもほどよく推敲が出来ていたようです。そのため老若男女が違和感なく楽しめる仕上がりになっていたと思います。クライマックスには、哀しみと幸せの感情が同時に訪れて、少し泣けましたよ。

篠原涼子さんがフライパンを片手に仁王立ちしているチラシの写真、あれはインパクトがあります。でも、映画を観てからは、メガネをかけて机に座り、まるでハンダごてを持って真空管アンプでも自作しているようにお弁当を作っている、繊細な愛情に満ちた、別の写真が相応しいと思いました。

又、芳根京子さんは、反抗期の娘という設定でした。母が「陽」なら、芳根さんは「陰」のように、「いつも、ふてくされて、ろくに返事もしない」役柄でしたが、「陰」の演技でどのように「光る」かという難しい課題に挑戦しておられたように思います。その辺りも見どころだと思いました。

それから八丈島の大自然は、背景になっているだけでも旅情を誘いました。東京から飛行機なら近そうですね。

★★★★

追記Ⅱ ( ブレンドの味 ) 
2019/6/29 7:05 by さくらんぼ

私が観た篠原涼子さんの作品で印象深かったのは、映画「アンフェア」とTVドラマ「ハケンの品格」でしょうか。

そのせいか、彼女には「怖い・切れ者」という印象がありました。もし身近にいたら、私などすぐ叱り飛ばされるような、お局さんみたいな。

でも、バラエティなどで拝見すると、意外と面白そうな人なのです。それどころか、失礼ながら「天然!?」と思われるようなところもありました。

でも、さすがに失礼に思って、そこまで言うのは躊躇していましたが、下記のヘッドラインを読んで安心しました。

『 篠原涼子「お腹鳴っちゃった!」舞台挨拶で天然炸裂<今日も嫌がらせ弁当> 』

( 2019.06.28 19:16 「モデルプレス」 )

追記Ⅲ ( 目は口ほどに… ) 
2019/6/29 7:14 by さくらんぼ

芳根京子さんが、「陰」の演技でどのように「光る」かという難しい課題に挑戦されていた、と書きましたが、この成功例で思いだされるのは、モノクロ時代の黒澤明監督の映画です。

ご承知のように、脇役の方がワンシーン登場するだけでも、多くは凄みのある映像になっているんです。異様なほど光っているんですね。ですから、俳優さんの演技力だけでなく、監督さんの技量というか、手法というか、そんなことにも左右されるのでしょう。

ましてや、今回のようなコメディタッチ、TVのホームドラマ的な演出で、黒澤映画のような「光」を表現するのは違うのかもしれませんね。しかし、表情のアップはもっとあっても良かったかな、という気持ちもあります。池井戸潤さんの小説が多くTV化されていますが、あの演出手法です。

表情のアップと言えば、芳根京子さんが東京の会社で面接試験を受けるシーン。数人の試験官の前で彼女の顔がアップになるのですが、セリフを言いながらの目線の動きがリアルなのです。向かい側に実際に試験官がいるのでしょう。心の動きと共に、何人いるのかまで分かりそうな動きでした。本当に試験を受けているんだなぁ、という緊張感が伝わって来ました。

追記Ⅳ ( Wの悲劇 ) 
2019/6/29 9:14 by さくらんぼ

娘・双葉(芳根京子さん)は幼馴染みに恋していました(幼馴染みも双葉に気のあるそぶりを見せるのです)。

だから、母・かおり(篠原涼子さん)を真似て弁当を作り、告白しようとしましたが、幼馴染みはすでに別の女の子と恋仲でした。

目の前で二人のキスを目撃する双葉。その様子を陰で見ていたかおり。

その直後、かおりは双葉といっしょに公園で腰かけ、慰めるのです。

しかし、その時かおりが組んだ脚は、双葉とは反対方向を向いていました。

たまたま、そうだっただけなのでしょう。私も映画館などでよく脚を組みます。右へ左へ何回も組み直します。だから、左右どちらでも良いのですが、私の知っている限り、ボディランゲージでは、隣人と反対側に組んだら拒絶のシグナルのようなのです。

誤解や混乱を招かないよう、私が監督なら指摘すると思いますが、島の空気が、おおらかさを生んだのかもしれませんね。

追記Ⅴ ( 「見つけてくれた人を忘れない」 ) 
2019/6/29 10:08 by さくらんぼ

何かの時にも書きましたが、「子どもが生まれるとき、肉体は両親からもらうのですが、魂は天国から来るそうです。空から下界を見ていて、『あの両親が好き』と思った魂が降りてくる」のです。どこかで、そんな話を読みました。これは「子どもはコウノトリが運んでくる」という西洋の話とも似ていますね。

ところで、

双葉は幼い頃、かおりに「おおきくなったら、おかあさんと、けっこんする」と言ったのです。喜びながらも「親子で結婚はむつかしいかなぁ…」と言うかおり。すると双葉は、「なら、おかあさんといっしょにレストランをしたい、ず~っといっしょにいたいから…」と言いました。

母が子を産んだのですが、「子が母を見つけた」とも言えるのです。

この映画「今日も嫌がらせ弁当」には、いろいろ教訓めいた言葉が出てきます。その中で、私が注目したのは「見つけてくれた人を忘れない」(だったかな)です。

この場合、反抗期に入って混乱している娘を助けることは、母を見つけてくれた(愛してくれた)恩返しのようなものだ、と思います。

この主題めいた話はラストにも出てきて、かおりが始めたお弁当のブログを見つけ、メールもくれるようになった東京に住む父子家庭のおとうさん(佐藤隆太さん)が、八丈島に遊びに来たのです。そして、偶然かおりを見つけ、喜んで挨拶をするのでした。なにやら新しいLOVEの気配がします。

また、双葉にしても、八丈島からはるばる東京の会社へ就職が決まったのですが、会社は見つけてくれた社員を大切にしなくてはなりません。使い捨てではなく。

そう考えると、なぜ遠くの島が舞台になっていたのかも分かるような気がします。

ちなみに、ブログで思いだしましたが、私ほど読者の方を大切にしていない人も少ないと思います。この場を借りてお詫びいたします。

追記Ⅵ ( 命を削って ) 
2019/6/29 15:45 by さくらんぼ

この映画「今日も嫌がらせ弁当」が胸に刺さるのは、クライマックスに母が脳梗塞で倒れてしまったことです。幸いすぐ退院できましたが、ときどき右手が不自由になり、命にかかわる要注意の体になってしまいました。

3年間も娘に「嫌がらせ弁当」を作り、娘の一歩先を行くよう、毎日そのメニューを考え続けながら、母子家庭ですから働きに出ていたので、その疲労がたたったのです。

それは、ブログを書くのが大の苦手な人が、働きながら、3年間読者を驚かすようなネタを探して書き続けるのと同じぐらい、大変なことなのかもしれませんね。

しかも、その娘は卒業と同時に東京へ出ていく。

反抗期であれほど親を悩ませた娘が、無事に独り立ちしていく晴れの日とは言え、その代償として、母が命を削ってしまったことには、一抹の哀しみが残ります。

そこに天の配剤のように現れたのが、父子家庭のおとうさんだったのです。このおとうさんの存在がなければ、小津安二郎作品みたいとまでは言いませんが、後味はずい分と違っていたと思います。

追記Ⅶ ( 「おおきな木」 ) 
2019/6/29 15:49 by さくらんぼ

どこか、

シェル・シルヴァスタイン作の絵本、

「おおきな木」を連想します。

追記Ⅷ ( 「まじ卍」 ) 
2019/6/29 15:57 by さくらんぼ

ちなみに、

「まじ卍」(まじまんじ)、

こんなセリフも出てきます。

追記Ⅸ ( 反抗期・弁当・八丈島 ) 
2019/6/30 15:27 by さくらんぼ

反抗期が、娘の心が混乱している状態なら、嫌がらせ弁当自体も、(愛情に裏打ちされているとはいえ)母と娘の混乱なのです。

そして劇中、母の心の声として繰り返して語られた、「八丈島と東京、いえ、八丈島も東京なんですけどね!」もそうなのでしょう。理屈では同じ東京でも、感情はそれを否定するから混乱する。

追記Ⅹ ( サイパンと八丈島 ) 
2019/6/30 15:29 by さくらんぼ

『 それは「あえて小さな場所(心の記号)を舞台にすることで、心の中にある葛藤を(主題か)、より浮かび上がらせる効果が期待できる」からでしょう。』

映画「ウインドトーカーズ」2017/8/11 8:40 by さくらんぼ 追記Ⅳより抜粋 )

小さな島、サイパンを舞台にして日米戦争を描いたこの映画を連想しました。

追記11 ( 瞬間芸 ) 
2019/7/1 9:43 by さくらんぼ

人気TVドラマ「チャンネルはそのまま!」のヒロインは、雪丸花子(芳根京子さん)ですが、この映画「今日も嫌がらせ弁当」での芳根京子さんの役名は持丸双葉です。「雪丸」と「持丸」、氏がどこか似てますね。

もちろん、うっかりしていると別人だと思うほど、両者のキャラは違います。

( 昔話ですが、私など、ワイドショーに出ている笑顔の女子アナさんと、神妙な顔で原稿を読んでいる同一人物が、別人だと思っていたこともあります。彼女のファンだったのに。)

でも、持丸双葉に、一秒間だけ雪丸花子(のキャラ)が顔を出す瞬間があります。お楽しみに。

追記12 ( 人生の味 ) 
2019/7/12 18:07 by さくらんぼ

今はどうか知りませんが、私の学生時代、冬になると学校ではお弁当を温めました。

別室に、小さなロッカーのような保温器が用意され、給食当番は、朝、皆のお弁当を集め、そこへ入れに行くのです。

そして、お昼になると、今度は取りに行く。

冬でもお弁当はほっかほかでした。

でも、熱源の近くに置きすぎると、少しこげてしまう事も。おこげ程度ならご愛敬ですが、ときに炭化することもありました。

あれを「嫌がらせ弁当」と言ったのかどうかは、今となっては定かではありません。

追記13 ( 「やめてよかった」5つのこと ) 
2019/8/29 15:33 by さくらんぼ

>この映画「今日も嫌がらせ弁当」が胸に刺さるのは、クライマックスに母が脳梗塞で倒れてしまったことです。幸いすぐ退院できましたが、ときどき右手が不自由になり、命にかかわる要注意の体になってしまいました。

>3年間も娘に「嫌がらせ弁当」を作り、娘の一歩先を行くよう、毎日そのメニューを考え続けながら、母子家庭ですから働きに出ていたので、その疲労がたたったのです。(追記Ⅵより)

『 男子高校生のお弁当作りを1年半続けて実感。「やめてよかった」5つのこと 』

( 8/29(木) 6:45配信 「LIMO [リーモ]」 )



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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