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#ネタバレ 映画「トスカーナの休日」

「トスカーナの休日」
https://eiga.com/movie/52213/photo/
2003年作品
ひまわりの様な生き方
2004/8/3 18:01 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

会社の近くの裏通りに小さな空き地がある。

車が二台ぐらい駐車できる土の庭である。

そこは春になると毎年色とりどりの花が咲き、美しく安らぎに満ちた空間に生まれ変わる。

まるでルノアールの絵のようだ。

あんな庭が欲しい。

何度そう思ったことか。

でも、横目で見るだけで、いつも通り過ぎていった。

しかし、この映画の主人公なら、そうはしないだろう。

彼女は離婚して家を失い、傷心のまま小さなアパートに引っ越してきた。

女一人で雨露をしのぐだけなら十分なものだ。

しかし、そこは快適ではなかった。

隣の部屋には彼女のように哀しみを抱えた住人が居て、その声が聞こえてくる。

ますます気持ちが滅入ってくる所だった。

その後、彼女は友人の勧めもあってイタリアのトスカーナへ傷心旅行に出かける。

ここから彼女の世界が変わり始める。

彼女はトスカーナに家を買う。

築300年の古民家を衝動買いしてしまうのだ。

そして、その家をリフォームしていく。

ご承知の通り、二軒の家は彼女の心の心象風景を具現化したものである。

しかし、二軒目の家は彼女の努力で快適に作りなおす事が出来る。家をリフォームする事は、彼女の心のリフォームでもあった。

この映画は、人生に失敗した人が、人生を萎縮して再起を図るのではなく、さらに自己を表現し、拡大しながら再起の道を探る物語なのだ。

転ぶたびに用心深い小物になるのではなく、さらに大きく飛躍する物語なのだ。

自分の舞台を探して彼女はアメリカからイタリアに移住する事にする。なんとスケールの大きな話だろう。

彼女にとっての理想郷であるトスカーナに、一目惚れするほど惚れ込んだ家を持ち、そのリフォームを通じて沢山の人と知り合いになる。一石二鳥の効果である。

「汽車が必要な時の為に、予め線路だけ敷いておく」そんなエピソードが繰り返し紹介されるが、これは彼女の行動と符合している。いつしか家には多くの人が集うようになった。

この映画は男女の恋の綾を描くラブストーリーでは無かった。人間の生き方を描いていた。恋物語はその中の単なる一部分にすぎない。

最近観た映画の中では出色の出来栄えである。脚本に遂行が重ねられているのだろうか、味わいは舞台のトスカーナに負けず滑らかで美しい。DVDをコレクションしたくなった。せめて移住の夢でも見るために。

追記
2004/8/7 11:26 by 未登録ユーザさくらんぼ

汽車が先か、線路が先か・・・この映画のモチーフは「違う考え方」つまり「異文化・個性」だったのだろうか。

離婚も、なにかしらの不一致が原因だろうし、アメリカ対イタリアもそうだ。ゲイのツアーも出てきた。

古民家を買うときにはドイツ、アメリカ、イタリアが交渉するという構図が表れたし(戦争映画の参加国みたい)、結婚問題でイタリアとポーランド(だったか)との差別も描かれる。そして、そこに手助けに入ったのがアメリカだった。主人公の親友には東洋人も出てきた。

また、彼女が古民家を買えたのは、最終的には値段の問題だけでなく意外な「イタリアの鳩の糞伝説」のだった。まるで信仰の様なこのエピソードは、アメリカに対して何か物申している様にも見える。そう言えば彼女が雷から逃げ込んだのは「マリア様」?の描かれたベッドだった。脇役には修道女も出てきた。宗教的な匂いがしなくも無い。

古民家を工事する職人にも様々のタイプの人たちが登場する。また彼女の文芸批評を読んで怒る作家もいれば惚れた作家もいた。違うから対立し、違うから憧れる。とかくこの世はおもしろい。

追記Ⅱ 2022.11.14 ( お借りした画像は )

キーワード「イタリア」でご縁がありました。色鮮やかで、シンプルで、美味しそうな料理ですね。久しぶりに白ワインなど飲んでみたくなりました。画像は無加工です。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)





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