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#ネタバレ 映画「天国にいちばん近い島」

「天国にいちばん近い島」
1984年作品
人は自分の心から出られない
2008/7/14 15:46 by 未登録ユーザ さくらんぼ (修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

少女が一人、はるばる南の島へやってきて、自らツアーから離れ、「ここじゃない、ここもちがうわ」などと言いながら放浪しています。

日本から遠く離れた南の島に来てまでも、まだ自分の心の中を旅していたのです。

人はどこへ行っても、誰に逢っても、結局死ぬまで自分の心からは出られないのです。たまには気分転換に出たいと思っても。

そう言えば聖書か何かでこんな言葉を読んだことがあります。「君の心に指一本触れられない人を恐れる必要はない」。

そうですね、拷問をしても他人の心には直接触れることは不可能なのでした。

嬉しくもあり、恐ろしくもある現実です。

追記 ( いつも忘れ物をしてしまうけれど ) 
2015/7/30 6:26 by さくらんぼ

南の島よりも、

きれいな夕陽は、

隣町にありました。

何かをやり残した気分の、良く晴れた夕暮れ時には、ときどき港へドライブします。

そこには、ビルでカットされていない広い空があるのです。

岸壁にクルマを停め、カーステレオでFM放送など聴きながら、しばらく景色を眺めていると、ふいに夕陽のグラデーションに気がつきます。

壮大な、東のブラック、天頂のブルー、西のオレンジ。

それが、刻一刻と表情を変えます。

私はこんなフィナーレが大好き。

夕暮れ時になると、外がまだ明るいのに、早々と部屋のカーテンを閉める人が信じられません。

実は、私はオーロラにも憧れています。

もしかしたら、このグラデーションが好きなのも、それが根っこにあるのかも。

やがて壮大な夕陽のショーも終わり、あたりがブルーのインクに染まるころ、拍手の代わりに、クルマのハイビームで遠くの工場地帯を一瞬照らしてから、家路につきます。

そういえば、オレンジの夕陽が沈む瞬間に、一瞬グリーンに輝くという「グリーンフラッシュ」は、まだ見たことがありません。

いつも、あの瞬間には、心は内面にあるから。

明日は良いことがありますように。

それから、おすすめの夕陽の写真集を買ったよって、彼女に伝えなくては…

追記Ⅱ ( 夕陽の下にはレゴランド ) 
2017/4/2 14:52 by さくらんぼ

>それから、おすすめの夕陽の写真集を買ったよって、彼女に伝えなくては…

「そんな彼女いたっけ?」。

冗談ではなく、ほんとうに記憶がありません。だから少し真剣に思いだしてみたら、ぼんやりと、写真集の話をしてくれた知人もいたような…でも皆さんが想像しているような人ではありませんよ。

それはともかく、

「追記」は、わたしが若いころ「レゴランド・ジャパン」近くの埠頭ですごしたトワイライトタイムの話です。この春オープンした。

追記Ⅲ ( 人は自分の心から出られない ) 
2020/4/12 11:46 by さくらんぼ

10年ほど前のこと、(今は亡き)父と私は、母の納骨をするお墓をつくるため、あちこちを見て回りました。

最終的に父が選んだのは、見晴らしの良い郊外の墓地ではなく、街中にある閉鎖空間の納骨堂でした。父は、老いて足が悪くなったので、お墓もフラットな近場にしたかったのです。

それをきっかけに、ぼんやりとですが、私のお墓についても考えました。木枯らし紋次郎みたいに、外こもり、道こもりの私には、見晴らしの良い郊外の墓地が魅力的でした。

しかし、どんな墓地であろうと、動けないのは苦しいとも思ったのです。ならば、(昨今、話題になってきた)散骨も良いなと。

では、どこに散骨してもらったら。

あんまり、とおくて、さみしいばしょでも、いやだし…。

その時、ふと頭に浮かんだのが、わが町にある〇〇公園。とても大きな公園で、春には隠れた桜の名所でもあり、最近水質がきれいになった運河が流れ、そして母校でもある中学校があります。

今までの人生では、中学生時代と、20代が一番楽しかった。その、懐かしい中学校を眺められる、そこの運河にでも散骨してもらえれば…。

そう思いました。

追記

やがて、その話は忘れてしまいました。

それから10年たち、わけあって引っ越しをすることになったのです。

あちこち探しまわって、昨年秋に新居を見つけました。あわただしい引っ越しと、後かたずけや、手続きが終わり、「そう言えば、大きな公園もあったな」と朝の散歩にくりだしたら、ふと思い出したのです。この公園は、10年前に私が散骨の夢を見た場所だと。

幸い私はまだ元気ですが、私の魂は、まるで散骨されたごとく、すでに、その場所に漂っていました。

(  先日亡くなられた、大林宣彦監督のご冥福をお祈りします。 )

追記Ⅳ ( 映画「星の子」 ) 
2020/10/23 9:49 by さくらんぼ

映画「星の子」の私のレビュー追記に、映画「天国にいちばん近い島」の話を、いろいろ書きました。

二本の映画は関係があるように思います。

映画「星の子」もネタバレでよろしければ、あちらを、ぜひご覧ください。

追記Ⅴ ( ヒロインが本当に見つけたのは将来の伴侶か ) 
2020/10/30 9:51 by さくらんぼ

以下は、映画「天国にいちばん近い島」へのオマージュだと思われる関係上、映画「星の子」に記載した映画「天国にいちばん近い島」のレビューをお読みいただいてからの方が、より分かりやすいかと思います。

いろいろあって、女子高生のヒロイン・桂木万理(若き日の原田知世さん)は無資格の日本人ガイド・深谷有一(峰岸徹さん)から(昔の彼女を引き合い出して)求愛されます。

桂木万理は無意識にそれを断るのですが、それにしても30代中ごろだと思われる深谷有一が女子高生に求愛とは、(理解を示しつつも)年齢的にはほとんど犯罪行為(冗談です)ではないのかとも私は思っていました。

それがずっと喉に引っかかっていたのですが、本日やっと分かったような気がします。

深谷有一が引き合いに出した元カノとの恋愛物語とは20年前の話です。彼が高校生ぐらいの時の話で、おそらく元カノも同じぐらいの年齢でしょう。そんな深谷有一の高校生のインナーチャイルドが、我を忘れて、現在女子高生の桂木万理を口説いたのです。

すると、ここからもう一つの恋愛が、少しだけ深く見えてきます。

桂木万理が島で知り合った日系三世の青年・タロウ(高柳 良一さん)との話です。

タロウは映画の前半に桂木万理と知り合いますが、そのとき桂木万理は、自転車で転んでメガネを壊してしまうのですね。もしかしたら、あれは現実(目)の世界から、恋()の世界に入った記号だったのかもしれません。恋は盲目ですから。

そしてタロウが運転していたトラックからはヤシの実が転がり落ち(坂道だったので)、二人でそれを追いかけます。これも二人が恋に落ちた記号でしょうか。

映画のクライマックスには美しいウベアのビーチで、「私の天国にいちばん近い島を見つけた。それは眼の前にあります」「僕もニッポンを見つけた。それは万里さんです」(ウィキペディアより)と語り合います。

あれは相思相愛の告白ですね。桂木万理流のグリーンフラッシュです。桂木万理は少しぼかして「天国は目の前(タロウさん)です」と、タロウはよりストレートにて「天国は万里さんです」と言いました。

「男の子の最初の恋人は母であり、女の子の最初の恋人は父である」とか申します。この映画「天国にいちばん近い島」は、父という恋人を亡くした桂木万理が、追悼の旅で新しい恋人を見つける旅だったようです。

10年、20年先には、大人になったタロウと桂木万理が、新しい恋愛ドラマを創るのでしょう。

その伏線が深谷有一と(後に復縁する)元カノだったとも言えそうです。

追記Ⅵ ( 映画「ノマドランド」 ) 
2021/5/4 9:41 by さくらんぼ

そして、映画「ノマドランド」からも、映画「天国にいちばん近い島」を連想しました。

追記Ⅶ ( 一枚のチラシから ) 
2021/5/4 9:54 by さくらんぼ

世に「幽霊文字」というものがあります。

単に私が怖く感じるだけかと思っていましたら、姪っ子も幼い当時に怖いと言っていましたので、あれは普遍的な感覚なのかもしれません。

ところで、映画「天国にいちばん近い島」のチラシに使われているこの書体、幽霊文字とまでは言いませんが、背景にある曇天の空にマッチするような、少々の不安感をまとった、カラリとした楽園感覚のない文字のようにも見えます。

この書体も、背景の曇天も、枯れ木も、ヒロインの心象風景でしょう。

映画「ノマドランド」は、ヒロインの心情をストレートに荒野で表現していましたが、映画「天国にいちばん近い島」では、あえて楽園を舞台にすることで、ヒロインの心にある複雑を表現していました。大林監督の才能でしょう。

追記Ⅷ 2022.4.28 ( お借りした画像は )

キーワード「夕陽」でご縁がありました。無加工です。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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