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#ネタバレ 映画「赦し」

「赦し」
2022年製作 日本
2023.4.30

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

チラシの写真など観ていた時は、てっきり韓国映画だと思っていました。

だから、そのつもりで観に行ったのですが、登場人物が日本語を話し出してビックリ。

きっと、ヒロインの写真がそうイメージさせたのでしょう。

さらに、裁判に絡む離婚夫婦の元・夫が、目力のある髭面で、これも日本人らしくない風貌なのです。

監督はインド系の方のようですから、そのせいでインド人風にしたのかもしれませんね。

もちろん舞台は日本で、少女殺人事件の裁判のシーンが大半です。

しかし、この作品は、裁判の謎解きだけでなく、被害者・少女の離婚夫婦と、妻の再婚相手なども、事件と同じぐらいの比率でドラマに関与してくるところが、並みの裁判ドラマとは一線を画すと思いました。

そんな右往左往する周囲とは違い、なぜか、一番まともに見えるのが加害者の少女です。

見応えのある一本です。

追記 2023.4.30 ( 磔 )

>さらに、裁判に絡む離婚夫婦の元・夫が、目力のある髭面で、これも日本人らしくない風貌なのです。(本文より)

書いていて気づきましたが、この元・夫は、磔になったイエスの記号なのでしょう。だからインド風というよりも、イエスのような風貌になっているのです。

彼は、凶器になるプラスチックの破片を隠し持って、娘を殺した女に面会をします。普通、面会は透明なパネル越しですが、加害者の弁護士に頼み込んで、パネルなしでの面会をするのです。

でも、改心した女の話を聞くうちに、握りしめた手の平から血を流して・・・。

このドラマでは、(泥水に咲いた蓮の花のような)加害者の女が、その「聖」で被害者の家族を浄化するのです。

一番まともに見えるのが加害者の少女なのは、どうやら監督の意図のようです。

追記Ⅱ 2023.5.1 ( 見返りが無ければ人は動かない )

>彼は、凶器になるプラスチックの破片を隠し持って、娘を殺した女に面会をします。普通、面会は透明なパネル越しですが、加害者の弁護士に頼み込んで、パネルなしでの面会をするのです。(追記より)

彼が弁護士に頼むと、弁護士は「私たちは見返りがないと動かないのですよ。何を頂けますか」(言葉は正確ではありません)みたいに返しました。
そして、「裁判の証人を降りる」ことを約束させるのです。

被害少女の両親が証人を降りる事は、裁判で加害者に有利になるようです。つまり懲役20年だった刑期が減刑される可能性が高まります。

この時の、弁護士とのやり取りで、私は「見返りがないと人は動かない」という言葉を思い出しました。映画「ホテル・ルワンダ」のレビューにも書いた言葉です。あちらもぜひご覧ください。ロシアの侵略と戦うウクライナの大統領を連想します。

そう思うと、裁判映画ですから、この作品の登場人物たちは正義とか善悪とかにこだわりますが、哲学的と言いますか、学問的と言いますか、純粋にそれだけを追い求めているのでは無いように思えてきました。

ヒロインも含めて、裏には「見返り」の損得を計算しているような気もします。私でもそうします。仕方ありません。それが人間でしょう。

そう思った時、映画の予告編の冒頭にも出て来た、有名なマタイの福音書の一節が刺さってきました。

「人を赦さないならば、あなたがたの父も、あなたがたの過ちを 許さないであろう。(マタイによる福音書)」

「あなたがたは地獄に落ちるが、それでも人を赦しなさい。それが人の道です」とは、神様も言っていないようですね。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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