#ネタバレ 映画「パンチドランク・ラブ」

「パンチドランク・ラブ」
https://eiga.com/movie/1145/photo/
2002年作品
ジェットコースター
2003/8/31 17:27 by 未登録ユーザ さくらんぼ　（修正あり）

（　引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。）

この作品に出てくるハワイは生々しい。

飛行場のシーンには日本語のアナウンスがかぶり、鶴丸の飛行機が映る。

ホノルルの街頭シーンは東洋人ばかりで、まるで日本の街のようだった。

舞台のホテルはどこだろう。

私は、あの高級ホテルには泊まったことが無いが、フラのショーと夜のワイキキビーチを同時に楽しむと、あんな雰囲気だったのか。

突然ハワイの話になってしまったが、この映画にそれが出てくることをまったく予想していなかったので、得した気分だった。

ところで、「恋人になりたい者同士は、ジェットコースターに乗ると良い」と昔から言われている。ジェットコースターのドキドキ感が、相手からのトキメキ感と錯覚されるために、恋が実りやすいのだそうだ。つまり「ストレスに対する反応」、この映画はどうもその辺が描かれているようだ。

映画の冒頭、夜明けだろうか。空がぼんやりと明るくなってきた頃、徹夜明けの男が会社の前で一息入れていた。そこへ近づく車のヘッドライト。見るともなしに見ていると、自分の前で突然横転する事故を起こす。

驚きのあまりフリーズしていると、今度は別の車が目の前に止まり、小さなオルガンの様な物を捨てていく。

慌てて会社に逃げ込んだ男だったが、また出てくる。その時、さらに別の車が男をカスメて通り過ぎる。男はまた逃げるが、男の手にはオルガンが抱えられていた。彼はオルガンに恋をしたようだ。

他にも、ピンク系の電話に騙され、恐喝されていた時に、姉から引き合わされた女性と交際するようになる。そしてデートの帰り、彼女をアパートへ送り、帰ろうとしたときに管理人室で電話が鳴る。電話で恐喝されていた男はドキリとするが、それが彼女からの、お休みのキッスの催促だった事を知り、再び彼女の部屋に戻る。これで恋は急進展をする。二つのエピソードは「ストレスの効果」を描いていたのか。

それだけではない。映画の後半、ハワイ帰り、彼女と一緒に帰宅した彼の車に、恐喝相手の車が激突してきた。彼の車は半回転し、彼女は額をぶつけ血を流す。このシーンの衝撃度は「ジェットコースター・ラブ（吊り橋理論）」そのものではないか。ラストでオルガンを持って彼女の家に出かけていく男に、伏線がクロスしたところを観たのだった。この映画は丹念に計算されたユニークでちょっとブラックな恋愛映画の佳作である。

追記
2003/9/2 18:25 by 未登録ユーザさくらんぼ

プリン（お菓子）とマイル（無料航空券サービス）が出てくる。この逸話だけは実話だそうなので、意味を探るのは空しいのかもしれないが、空を飛ぶ事は「ストレスからの開放」を意味するので、映画に取り入れられた理由もそこに有るのだろう。

頻繁に出てくる電話はストレス製造機の一つであろう。直接会いに行く事はストレスからの開放である。また、彼がトイレを壊すストレス発散事件は、彼の仕事がトイレと関係が有る事から連想されたのだろう。

また、なぜオルガン（主人公はピアノと言っていたし、正確には耳馴染みの無い名前だった）を登場させたのか。そういえば同じ鍵盤楽器のピアノが、映画「ピアノレッスン」にも、海岸に性的なシグナルを発信するものとして登場した（ある評論家が言っていた）。そのシュールな映像は忘れられない。ピアノがなぜ性的なシンボルなのかハッキリとは分からないが、演奏時の指先の動きはとてもセクシーである事だけは感じられる。

そう言えば、映画「グランブルー」でもエンゾが海をバックにピアノを弾くシーンが素敵だった。

「陸に戻る理由が見当たらない」と言ったジャックを自ら海に飛び込んで誘う彼女。彼女は海に浮かびながら陸での将来の夢を語る。彼女の周りを手をイルカの背びれに見立てクルクル泳いでいたジャックは、その話で姿を消す。それに気がついて悲痛な声で「ジャ～ック！」と叫ぶ彼女。

この次のシーンでは、海から一人とぼとぼと帰ってきた彼女が、ピアノを弾くエンゾのそばを通り過ぎていく。二人だけがワンシーンに納まる。エンゾに恋の唄を歌っていたのは彼女だけではなかったのか。今思うと意味ありげなピアノでもあった。

追記Ⅱ　2022.10.20　（　お借りした画像は　）

キーワード「ジェットコースター」でご縁がありました。目にした途端、なぜか離れられなくなる絵でした。ひと目何とかでしょうか。無加工です。ありがとうございました。

（　最後までお読みいただき、ありがとうございました。　

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