見出し画像

読書メモ「後世への最大遺物 デンマルク国の話」

 内村鑑三の講演録。冒頭から駄洒落で聴衆を沸かしたり、随所で冗談を交えたり、きっと楽しい講演だったのだろう。
 生まれたからには、少しでもこの世を良くしたい、そのために何を遺すか。金でも、事業でも、思想でも良いだろう。しかし、それがなくても、勇ましい高尚なる人生を遺せばそれで良いという。つまり、逆境に負けず、正直に生きていくこと、その姿を周囲に見せて、正しい行いをする勇気を見せること、それを人生の目標にするということ。辛くても正しく生きるということに勇気をもらえる。
 「生まれたからには、少しでもこの世を良くしたい」というのは、自分の人生の指針にしても良い言葉だと思った。
 もう一つのデンマルク国の話は、敗戦により領土を失いつつも、木を植えて土を肥やし、国を豊かにしたデンマークでのエピソードが語られる。日清日露戦争当時の、国全体がイケイケの時節にこれを語った先見性と勇気に感服する。
 いずれの講演においても、頼山陽などの伝統的な東洋の教養とキリスト教など西洋の知識が一つの人格で混ざり合っていることが感じられる。伝統的な教養を身につけた上で、西洋の最新の知識を貪欲に吸収している。明治期の教養人というのはすごいものだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?