安倍政権と日本の政治  ~(1)安倍政権の評価、(2)短期的・中長期的な日本政治の行方・あり方、についての私見~

こんにちは。
青山社中広報担当の佐藤です!

今回は毎月配信している朝比奈一郎(あさひな いちろう)のメルマガに
記載した論考を掲載します。

2020年8月号メルマガ論考「安倍政権と日本の政治  ~(1)安倍政権の評価、(2)短期的・中長期的な日本政治の行方・あり方、についての私見~」

(1)安倍政権(第2期)の評価 ~攻めの前半/守りの後半~

<政権の総括>
正直、安倍総理の辞任は予想外であった。28日に記者会見をして国民に病状を説明するとの事前情報から、可能性として、厳しい病状を踏まえての辞任もあり得るとは思っていたが、おそらくは、持病を説明しての続投だろう、と考えていた(また、そういう説を信じていた)。不明を恥じるしかない。

連続在任期間が憲政史上最長となった第二次~第四次安倍内閣(2012年12月~2020年8月:約7年8か月)を、わずか1年で退陣となった第一次安倍内閣(2006年9月~2007年9月)と分けて、便宜的にここでは、第2期安倍政権と総称するが、この第2期政権をどう評価するかをまず書いておきたい。

安倍政権を一言で評価すれば、「転げ落ちつつあった日本の状況をかなり持ち直させた」ということに尽きる。「歌手1年、総理2年の使い捨て」とは、故竹下元総理の言だが、この第2期の安倍政権がはじまるまでは、2年どころか「総理1年」が常態化していた(第一次安倍、福田、麻生、鳩山、菅、野田と、いずれもほぼ1年内外)。

相手に顔を覚えてもらえなければ、そもそも信頼醸成などままならないのは人間社会では当たり前である。第2期の安倍政権発足以前は、多くの国民が「今の総理大臣って誰だっけ?」と政治にあきれ返り、ましてや海外では「国際社会において名誉ある地位を占める」(憲法前文)どころか存在感ゼロの状態であった。日本の総理と言えば「安倍」となり、国内外で「政治」や「日本」の存在感を取り戻したことは、当然にあるべき状態を達成しただけとはいえ、実は極めて大きな成果だ。辞任会見を見つつ、私の胸にまず去来した想いは「ああ、ついにこの時がきたか。本当にお疲れ様でした。厳しい状況を立て直してくださって有難うございました。」というものであった。

<攻めが目立った政権前半>
さて、安倍長期政権の特徴を一言で言えば、私見では「攻めの前半、守りの後半」となる。まず、攻めの前半であるが、ここで言う「攻め」というのは、国論を二分するような難しい問題について方向性を打ち出し、成果を出したということである。具体的には、私は特に1)大胆な金融緩和、2)TPP加盟の実現、3)安保法制の見直し、の3つを高く評価したい。

いわゆるアベノミクスは、正確には財政出動や規制緩和も含む「3本の矢」での経済活性だが、実質的には大胆な金融緩和の代名詞と言ってよい。当時、多くの経済・財政学者がインフレリスクや逆にその無意味さなどから過度な金融緩和に疑問を呈していた。正直、私自身、色々な学説を見ながら、この時期に真に有効な経済政策は何であろうかと思い悩んでいた時分に、結果責任という政治リスクを省みずに、アベノミクスを打ち出し、リフレ派の黒田氏を日銀総裁に任命し、一定の成功を収めたのは、果敢な攻めの政治決断だと言ってよい。

TPPにしても、民主党政権時から加盟についての方向性は打ち出されていたが、党内の反対などで進み切れていなかったのが実情だ。農家の支援を政治基盤にしている自民党の方が、本来はTPP加盟を打ち出すのは厳しい中、オバマ政権との交渉の中で、「聖域なき関税撤廃が前提ではない」との言質をうまくとって交渉入りを主導し、途中トランプ政権誕生でアメリカが抜けるというアクシデントはあったものの、何とか11か国でまとめ上げたのは大きい。概ね道筋をつけたという意味では第2期の安倍政権の「前半」の実績と言って良いであろう。

安倍政権発足時には、日本中にTPP亡国論が吹き荒れ、反対運動の嵐が巻き起こっていたが、当時、学生時代からの友人の某自民党国会議員と飲んだことがある。本人の本心としてはTPP加盟に賛成していたが、選挙区に多くの農家を抱える中、立場的にこれを認めるわけにはいかないと語っていたのが印象的であった。その彼も加わっていた「TPP参加の即時撤回を求める会」という自民党の議員連盟に、200人超が所属していたが、その状況でTPP加盟を実現させたことは政治的成果として特筆に値する。

安保法制は言わずもがなだ。特に集団的自衛権を憲法改正せずに認めることについては、野党のみならず、多くのメディアや学者たちから、否定論が噴出しており、政権運営的な立場からは、支持率が低下することが火を見るより明らかな政策マターであった。保身を考えれば、絶対にやらない政策であると言って良いであろう。まさに「攻め」の動きであったと言って良い。

その他、安倍総理を前面に出してのオリンピック開催地へのチャレンジなども、負ければ評価を下げるリスクがあったわけだが、当時は既に国論を二分していた話ではない。基本的に皆賛同していた。そういう意味では、特に上記の3つについては、支持率低下や党内からの大反発という危険を敢えて冒しつつ、信ずる国益のために邁進したということで安倍政権を高く評価したい。

<守りが目立った政権後半>
そして、「守りの後半」であるが、具体例としては、特に1)消費税率の引き上げ、2)選挙での勝利、3)米国トランプ政権誕生への対応、を挙げたい。

第2期安倍政権は、途中、消費税率を2度引き上げている。ほぼ支持率を下げる要因でしかない消費税率引き上げを、一政権で2回やった歴史は日本にはない。そもそも、2度の消費税率引き上げは、第二次安倍政権発足前のいわゆる三党合意で決まっていた話であり、面倒な重荷を背負わされた状態でスタートを切らざるを得なかった。つまり、危険から政権を守らねばならなかった宿命にある。そんな中、特に、当初2015年10月に予定されていた2度目の引き上げ(8%→10%)を、2回も延期しつつ、2019年に何とか実現したことは、この政権の「守り」のうまさの証左である。

更に第2期政権が空前の長期政権になった大きな要因は、6度の国政選挙で全て勝利したことだ。うち半分の3回は、解散のない参院選であり、選挙時期のコントロールができない。大敗して、国会がねじれる(衆院で多数でも、参院で多数が取れず法案などが滞る状態)ことが、日本政治の構造的リスクで、過去、自民党も民主党もこの状態に苦しんできたわけだが、第2期安倍政権は参院をうまく守り切った。

残りの3回は衆院選で、解散権である程度は選挙時期のコントロールが出来るが、4年の任期のどこかでやらねばならず決断が難しい。政権崩壊の危険因子である消費増税を、その延期や使途改変と絡めてうまく解散の大義名分とするなど(延期自体は国民は支持。かつ延期後の引き上げは再確認した「公約」であり批判されにくい)、ピンチをチャンスに変え、とてもうまく乗り切った。特に長期政権に対して国民的な「飽き」が来る後半の17年の衆院選、19年の参院選を、それぞれ多少は議席を減らしつつも勝利して乗り切ったことは、政権の守りの強さが際立った事象だ。

3番目のトランプ政権への対応だが、これこそ安倍政権の守りの強さを象徴する出来事だ。第2期安倍政権が丁度後半に入った約4年前、世界はもちろん、日本でも外務省ですら、米国大統領選では、ヒラリー・クリントン氏(民主党)の勝利を予想していた。そんな中、2016年11月にまさかのトランプ氏(共和党)勝利となるが、ほぼゼロからの信頼醸成は見事で、各国指導者の中で最も強固な信頼関係を構築した。国際的には、言動に難があるトランプ氏に尻尾を振るがごとき安倍総理のふるまいは非難の的になりかねなかったが、対中国・対北朝鮮その他、現実的な地政学的リスクを考えての国益実現とばかりに、なりふり構わずトランプ氏のアメリカにすり寄った。効果的であったことは間違いない。

その他、政権としては望まない形で降ってきた皇位継承や元号改変の話、保守派の朴政権とは段違いの韓国文政権の数々の反日的動き、最近のコロナ騒動など、特に後半に集中した感のある数多の受動的事象に対して、個別には色々と批判はあろうが、概ね、うまく対応して政権を守ってきたと言える。安倍政権は組閣の数も史上最多であるが、特に人事が難しくなる後半も、留任や再任、或いは転任(官邸の側近を閣僚にするなど)を多用し、当選回数的には大臣を希望する者が貯まって不満が高まる党内リスクをうまく抑えつつ、国民・国際向けの安定感を重視した。政策的には、あまり本質的な話とは言えない森友や加計、或いは、閣僚や側近の不祥事なども、ぼやから火が多少燃え広がったケースもあったが、総じてうまく消し止めたと見て差し支えない。

<守りが機能した背景と後半の息切れ>
守りの要は、菅官房長官や二階幹事長、そして、いわゆる官邸官僚、特に、私のかつての直接の上司でもあった今井秘書官(補佐官)や、同じ採用チームで働いたこともある佐伯秘書官などの経産省勢であったと見ている。官邸の屋台骨を支えた政治家の世耕弘成氏(NTT出身)や西村康稔氏(経産省出身)や加藤勝信氏(財務省出身)などは、政治家ではあるが、その出身なども踏まえると「官邸官僚」として考えた方が適切かもしれない。特に官邸官僚組に関しては、リスクを取って時に独断専行的に官僚らしからぬ決断をする彼らの実力と、特に目立とうという意思は見せずに影になって粉骨砕身、公務無定量とばかりに働く姿勢を個人的に知る身としては、この守りの強さは当然の結果にも見える。ただ、同時に、多分に周囲との軋轢というマネジメントリスクをはらんでおり、安倍総理から見れば、相当に難しい運営であったはずだ。約8年にわたって政権の骨格を守り切ったことは賞賛に値する。

経営学の世界では、いわゆる「柔道のメタファー」(三品和広氏)が用いられるが、企業幹部にとって重要なのは、かしこまって用意する「戦略」以上に、きちんと「受け身」が取れるかだ、ということが言われている。私見では、政治学・行政学の方が、この分野の研究が遅れている印象を持つが、安倍政権の強さの本質は、まさに、予想せぬ形で襲ってくる難題に対して、うまく「受け身」が取れたかどうかである。直前の民主党政権では、今読んでも惚れ惚れするような5原則5策からなる「マニフェスト」が用意され、戦略的に、「政治主導」をどう実現するかが、きちんと詰められて用意されていた。しかし、その戦略を実現する暇もなく、沖縄の米軍基地(普天間基地)移設問題で、無理筋である「県外移転」を、支持率90%超え状態だった鳩山氏が打ち出してしまい(氏に言わせれば、政権発足前からの民主党の路線だったわけだが、無理なものを積極的に出してしまったのは失敗であった)、受け身が取れなかった。

そういう意味では、守りに強い安倍政権が、その下半身の強さを活かして果敢に攻めたのが前半であったと言えるが、後半は、せっかくのその「政治的資産」(ポリティカル・アセット)をうまく活用した果敢な攻めが見えなかったのはとても残念だ。2014年の地方創生にはじまり、新三本の矢、一億総活躍、働き方改革、人づくり革命、全世代型社会保障、、、、と、石破氏の言ではないが「大河ドラマ」のように、毎年「目玉」となるキャッチ-な政策パッケージを打ち出していたが、これらは「攻め」とは言えない。ほぼ反対する人がおらず、打ち出しやすいが忘れられやすく成果も測られにくいものだからだ。例えば新三本の矢では、合計特殊出生率(女性一人あたりが出産する子供の数)で1.8を打ち出しているが、目立った成果はなく、むしろ最近は数値が下がっているくらいだが、効果検証がされて批判されることは、政権内部からの反省はもちろん、野党やメディアや国民的にも、ほぼ聞かれない。

安倍総理自身、辞任表明の記者会見で、憲法改正やロシアとの平和条約(北方領土)、北朝鮮拉致問題などの積み残し案件について忸怩たる思いを吐露されていたが、外交は相手のある話だから仕方がないとはいえ、憲法改正などについては、前半に見せたような果敢な攻めを見せて欲しかったのも事実だ。とはいえ、冒頭に詳述したように、歴史に残る成果を挙げているのも事実で、まずは、病状の一刻も早い回復を期待したい。議員は続ける意向をお持ちのようでもあり、いずれ、総理への再登板もあるかもしれず、また、個人的には、いずれかの内閣での安倍外務大臣を期待したいと思っている。各国首脳に顔が売れていて、電話一本で話が出来る関係は、それだけで日本の「資産」であり、活用しない手はない。

(2)短期的・中長期的な日本政治の行方・あり方

当面の動きの予想 ~菅政権の可能性~
ここまでで既にかなりの紙幅を使ってしまった。後半は、政局に焦点を絞る形で、私なりに、多少の願望も込めつつ、簡潔に将来の展望を書いてみたい。

まず、当面であるが、これは世上良く言われているように、自民党総裁選が、党員も広く含む形で行われるのか、議員中心(両院議員総会)で行われるのか、で大きく変わってくる可能性がある。その際、自民党の党則第六条と第八十条が鍵となるが、非常にうまく出来ているので、ご関心の向きには是非一読をお勧めしたい。

個人的な意見としては、自民党総裁の決定は、事実上、総理を決める重要な機会であり、通常どおり広く党員も含む形で選挙にて行って欲しいと思うが、そうなると、自民党国会議員の間では人気がなく弱小派閥の長にすぎないが、各種世論調査では常に安倍後継候補のトップであり国民には人気のある石破茂氏の目が出てくるため、同氏への反発が強い安倍総理をはじめとする政権要路は絶対に避けようとするであろう。極端な意見としては、石破氏になるのを絶対に避けたい総理が、敢えてこの時期に、後述する「特に緊急を要する時」ということで議員中心に選べるように「自爆テロ」的に辞任したという人もいるくらいだ。

したがって、党則第六条第二項の「ただし書」に書いてある「特に緊急を要する時」ということで、党員も広く含む形での投票ではなく、両院議員総会で物事を決めようとするであろうが、そうなると当然、「内輪の論理で総理を決めた」という批判をまぬかれない。それに対して、私見では、3つの反論が用意されていると感じる。一つは、党則第六条第三項に書いてある通り、完全に議員だけで選ぶわけではなく、都道府県代表が各三名ずつ含まれるので(計141名)、必ずしも議員だけで内輪で決めているわけではないという反論、もう一つは、党則第八十条第三項に明記されているように、今回選ばれる総裁の任期は安倍総裁の任期の残存期間、即ち約1年に過ぎないので、わずか約1年後には党員を含む広い形で、通常通りに総裁を選ぶということ、そして最後に、近々、衆議院解散という形で新しい政権に対する国民の信を問うので問題ない、というものである。

現にチラホラ聞こえてくる話としては、安倍総理が事実上、菅官房長官を後継指名していて総理が属する最大派閥の細田派が菅支持を決めつつあり(本日午後にも確定するとの説あり)、総理の盟友の麻生氏率いる麻生派、二階派、そして菅グループが菅氏支持で固まっており、平成研(竹下派)もそれに乗るという動きがある。これで一気に両院議員総会で押し切ってしまうというシナリオだ。細田派からは、下村博文氏や西村康稔氏が、麻生派からは河野太郎氏が立候補するという話もあり、本当にこれですんなり決まるのか予断を許さないが、列挙した各人としても、立候補するには推薦人を20名集める必要があるので(総裁公選規程第十条第一項)、そう簡単ではない。

各種世論調査では、安倍総理の辞任表明以降、自民党の支持率が上昇して他党が下がる傾向が見て取れ、衆院解散→総選挙のチャンスでもあり、仮に総裁選に投票できない多くの自民党員からの不満が出ても、上記の3つ目の「言い訳」を前面に出して、菅官房長官推し前提の両院議員総会シナリオで進む可能性が高い。ただ、各種技術が発達している現在においては、党員を入れた投票も大した手間ではなく、また、安倍総理は病による退陣とはいえ、全く執務不能という状態ではないので、通常どおりの総裁選出をすべきだと感じる。

<~岸田氏・宏池会の悲劇とリベラル保守新党への期待~>
そうなると浮かばれないのが岸田氏である。一時は安倍後継の最有力候補に見なされ、外務大臣や政調会長として汗をかいて来たわけだが、世論調査での人気のなさから、現状、岸田政権誕生は望み薄となっている。そこで私が期待したいのは、岸田派(宏池会)が、国民民主党(分党予定後の玉木新党)などを結集して新党を作り、リベラル保守を掲げて総選挙に臨むという動きだ。さすがに現実的には、10月とも言われるすぐにあるかもしれない衆議院総選挙に向けて、このような新党を作るのは難しいかもしれないが、近い将来には期待したい。

政治通には言うまでもないが、宏池会と玉木氏には共に「大平正芳後継」を名乗っているという共通点がある。大平氏の出身母体である宏池会はそう名乗って当然だが、玉木氏はというと、氏の出身地・現在の地盤は大平氏の出身地の香川であり、大平氏の孫なども陣営にて玉木氏を応援している。しかも、玉木氏は、岸田派の若手リーダーである木原氏と財務省同期で仲も良好であると聞く。この大平イズムの大同団結に、もう一人浮かばれない石破氏・水月会(石破派)が加わるのも面白い。総理候補という意味では、岸田氏よりは石破氏の方が国民的人気があり、新党の顔としては民意に訴求しやすい。

紙幅の関係で詳述はしないが、私は、現在の小選挙区制に鑑みれば、現実的な政権担当能力を持つ政党が自民党以外にも誕生すべきであるとの健全な二大政党制論者であり、そのためには自民党は一部割れるべきであると考えている。

こう書くと、9月半ばにも誕生するとされている150人規模と言われている新しい野党の誕生があるので、二大政党という意味では、それをきちんと育てればいいではないか、という反論が聞こえてきそうだ。既に報道されているように、国民民主党が分党してその多くが立憲民主党と新党を結成することになっており、無所属議員の合流などもあって、約150人規模になると見られている。私は、この新党は、少なくとも現状では、選挙目的・議員としての生き残り互助会としての「野合」新党に過ぎず、健全な二大政党制の一翼を担う政党としては、全く評価していない。

発表されている合流新党の綱領案・規約案を読み、交渉当事者の話も伺ったが(私自身が出演したテレビ番組にて、直接に同じく出演されていた立憲民主党の福山幹事長の話を聞き、また、個別にかつて上司でもあった国民民主党の玉木代表、学生時代からの友人である泉政調会長に、それぞれ個別にヒアリングもした)、1)自民党への理念・政策面での対抗軸、2)立憲民主党と国民民主党としての政策のすり合わせ面、のいずれの観点からも、立ち位置が曖昧であり、期待できない。

特に2)の両党の政策すり合わせに際しては、そもそも党首会談が一度も行われず(立憲側が回避)、数名ずつで集まって突っ込んだ議論をしての合流の協議会のようなものもない。政策の要となる政調会長が入っての協議も、半年以上にわたる合併協議の中でここ1か月くらいしか行われていない模様だ。ほぼ幹事長同士の交渉だけで物事が進んでおり、企業合併で考えれば、社長同士の会談もなく、両者の信頼醸成のプロセスもないという信じられない合流話だ。結果、本来、自民党への対抗軸として掲げるべきスタンス、例えば国民民主党側が訴えていた「改革中道」路線もなければ、目玉となる政策もない。綱領で唯一、エッジが立っている(ように見える)のは、原発ゼロだが、現在稼働している原発は実態的には4基である中、「対抗軸」と言えるほどの政策ではない。憲法改正についても、「立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。」と、まあ、当たり前の記述しかない。

よく、この合流新党は、かつての民主党の二の舞だという批判がなされるが、まだかつての民主党の方が、いわゆる影の内閣(シャドー/ネクスト・キャビネット)を作り、練り上げたマニフェストを用意し、政権を奪取しようとする姿勢・体制があったという意味で数段上だと思う。現時点では、この合流新党からは、影の内閣を作るという話すら聞こえてこず、「与党をスキャンダル等で叩いて、一定の批判票の受け皿となり、万年野党として生き残ろう」という姿勢しか感じない。合併に血道を上げていた小沢一郎氏の「このまま政治人生終われない」という気迫・執念だけが前面に出ている印象だ。

国民民主党は分党後、立憲民主党と合流しない勢力が、玉木代表を中心に、10人前後で新党を結成すると言われている。その中には、玉木氏を筆頭に、本来、岸田派と一緒になっても違和感のない人たち、例えば、古川元久氏、岸本周平氏、前原誠司氏なども含まれると見られている。少なくとも中長期的には、自民党宏池会と玉木新党を中心にリベラル保守派が結集し、先述のとおり石破派や維新の勢力なども取り込む形で、「改革かつ中道」を訴え、自民党と競り合うことの出来る新党が誕生することを期待したい。

上記で詳述したとおり、日本政治の最近の現実を踏まえれば、安倍長期政権の成果を評価するには人後に落ちないつもりだが、歴史的に見て、日本を大きく活性化するには、まだまだ改革が足りないと感じている。安倍総理辞任で新しい時代がはじまらざるを得ない中、日本の夜明けに向け、青山社中としても、ますます色々な形で汗をかかねばならないと感じる。

筆頭代表CEO
朝比奈 一郎

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2019年5月末から青山社中で働く広報担当のnote。青山社中は「世界に誇れ、世界で戦える日本(日本活性化)」を目指す会社として、リーダー育成、政策支援、地域活性化、グローバル展開など様々な活動を行っています。このnoteでは新人の広報担当者目線で様々な発信をしていきます。