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読書記録 / メタモルフォーゼの哲学

"私たちはただ一つの同じ生である。生は移動し、増殖し、変形する――まったく新しいエコロジーを導く、メタモルフォーゼの形而上学。"


ここで述べられる「生」とは生命一般を総合した大きな存在としての「生」だ。あらゆる生命体は、「生」がメタモルフォーゼして仮の形をとったものに過ぎない。
私たち個人も、かつてはその両親の体の一部だった。かつて別個体であった記憶を失うことで我々は個を、あるいは自我を獲得していく。
「食べる」こともメタモルフォーゼだ。他の個体としての形式を取っている何かを食べて、自分の中に取り込むこと。それはすなわち別個体が自分の一部にメタモルフォーゼすることに他ならない。
そのように考えれば「死」ですらメタモルフォーゼである。私が死ぬことは別の生命体の一部へとメタモルフォーゼする過程でもある。

生命体の全ての運動をメタモルフォーゼの過程と捉えると、それらは同時に「繭」的な存在でもある。この地球上の生命体はそれぞれが全てメタモルフォーゼの過程にある「繭」であり、地球そのものが大きな「繭」として捉えられる・

『誕生=出産』『繭』『再受肉』『移住』『連関』の五章+『はじめに』と『おわりに』でこの本は構成されている。キーワードだけで想像力が掻き立てられるし、この時点で刺さる人には刺さるはずだ。

元々が中世哲学の研究者だそうで。僕は中世哲学に明るくないけれども、どのような道筋でこの思想に辿り着いたんだろうか。
西洋哲学的に捉えれば、「神」概念を抜いた汎神論のようにも捉えられるし、言い換えれば仏教的な因縁生起の思想に近い。というかそのもののようにも思える。

人類を特権的な存在としてではなく、植物も含めた地平で「生命」一般を捉え直す視点は非常に興味深い。
同じ著者による『植物の生の哲学』も注文した。

もうすぐ『家の哲学』も出るらしい。アツい。




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