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ファッションデザイナーがBXを再構築すること

最近読んだnoteの記事の中で、GoodpatchTokyoの米永さん達による、ShippioのBXの取り組みが非常に印象に残ったので(特に下記の名刺の1/4円が4枚繋がると円になる、MISSIONのビジュアル化が最高に素敵でした。)、ファッションブランド、デザイナーが行うBXを書いてみようと思います。言語化する事で、自分としても再認識や学びがあると思います。


実はCIは昔からデザインしています。


企業活動が点では無く、線として連なりをもって表現される今だからこそBXという概念が誕生していると思いますが、各企業が提供するサービスやプロダクトが異なる性質上、連動してBXの方向性も明確に異なり、ゆえにBXチーム構成も見事に異なると思います。その中でも、弊社の様なファッションデザイナーが手がけるBXは、ブランド体験の名の通りUIからUX、CX、それらが結合してBXとなる一連のプロセスにおいて弊社独自のメソッドが存在します。(以前からCI策定を中心としたクリエイティブは多数していました。代表的なものが、1993年にデザインしたJOCのセカンドエンブレムです。他にも全柔連、観光庁のVISIT JAPANをはじめ多数の企業のCI策定とUIデザインさせて頂いております。)

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BXとはアブストラクトなものを言語化すること


ファッションデザイナーがBXを行うとき、感覚的な作業が中心では?と思われがちですが、感覚での判断は、プロセスの最下流、クリエイティブなアウトプットがあがってきた最後の一振りでしか使いません。それまでは、BXとは、インバウンド(社内)、アウトバンド(社外)に共通した価値体験を提供する枠組みの構築ととらえ、以下の様なプロセスを経て進行します。

1 企業ヒストリーのヒアリング(社員のメタ認知)

一般的な企業ヒストリーはWEB等で確認しつつも、様々な立場の方が語る企業ヒストリーを重要視してインタビューします。何年に合併してなどは、実はあまり意味がなく、働く方の企業認知レベル=企業ヒストリーだと思っていまして、社員が語れない企業の逸話は除外します。企業というグルーピングの中で、ハッカソンのごとく個人が持つ企業認識(メタ認知的なプロセス)をキーワード化して、最大公約数のストーリーが残すべき継承されるコアなストーリーとなり、抽出されていくプロセスです。企業は、無形のネットワーク的な捉え方がベストだと思っていて、場所や暦のある社名ではなく、働く人のネットワークと企業認知、そこから生まれるサービス、プロダクトではないでしょうか。リテールの店舗を除き、今の時代は、港区にある、千代田区にある等は全くの無価値です。

2 抱えている課題の本質の再認識

全ての課題には原因があり、しかし可視化できていない場合がほんとです。そして広義の有形無形のシステムが原因となり課題を発生させます。歴史がある企業ほど、本来時間と共に変化して行く事が前提となるシステムでも、変化しないという選択をとります。

ただ、理解できる部分もあります。変化は時間、思考、人の消費と摩耗であり、そして痛みであり、辛いのです。辛いから変化を拒否するのです。ゆえに対話を重ね、正面から直視できない事実を、時間をかけてゆっくりと目を開けて見る事が出来る様に、課題認識を続けていく事が重要です。継続的な横軸でのコミュニケーションが課題の本質に接近します。

また、課題の本質が実は別の所にあったという例もよくあります。昨年手がけたBXでは、課題として新卒の応募が少ないのは、企業としての魅力が無いからだという仮説を持たれていましたが、ヒアリングやリサーチを重ねて行くと、安定性、業界内でのトップシェア、離職率の低さ、福利厚生水準の高さなどバランスが取れており、魅力が無いのではなく、魅力が伝えきれていない(顧客=学生にとって選ばれる理由を想起させるマーケティング活動の実施が出来ていない)事が、課題の本質だという事がありました。

VISION、MISSIONに基づくVALUEの再検証

BXの再定義というプロセスでは、VISION,、MISSION、VALUEが確立され、当然PMFがすでに達成されていて企業規模がある程度のスケールに到達し、時間的な経過を経ているケースがほとんどです。しかしその為に、プロダクトサイドの論理が優先されがちであり、「いいものであれば、売れる、受け入れられる。」という心理に傾倒しがちです。よくある認知の劣化です。BXを行うにあたり、今一度、理り(VISION、MISSION)を紐解き、顧客から見た既存VALUEを再定義することで、新しいBXのVALUEとなるCX、UXが見えて来ます。この時に留意したいのは、無理にVISION、MISSIONをまるっと刷新する必要は無いという事です。すでに価値があるからこそ社会に企業が存在しているのです。無下に否定する事なく、アウトプットを少し変える事で変化が生まれます。

4課題が解決された未来に企業が提供できる新しいVALUE

1〜3のプロセス経て抽出したエレメントを掛け合わせて、新しいVALUEを創造します。この時に乗算で最もVALUEが高くなる様に、エレメントのスケールを比較して上げ下げを行います。企業のVISIONとMISSIONと整合性を取りつつ、VALUEの最大化を行います。VALUEは、内外に共有可能な言語化されたものとして、企業理念の一部になることも有れば、中長期成長戦略のスローガン的な位置付けになる事もあります。ここで重要な事は、

このプロセスに時間をかけないと言語化レベルが極端に落ちるということ

です。Don’t rush to the conclusion. 認識というものは「白色」といっても「オフ」なのか「晒し」なのか、国、地域、など生来に由来する所属コミニティにより異なります。場合により言葉の印象すらネガポジの場合があります。様々なタイプの社員がいる事を考慮し「共通の認識をもった言語化されたVALUE」を作ること。ここに時間をかけることは非常に重要な事だと思います。


言語化された新しいVALUEからUIの創造

残すべき、共有される企業文化・理念(過去)から、課題の再認識(現在)、そして再定義されたVALUE(未来)は、時間の流れそのものです。過去⇨現在⇨未来へ、点と点を戦で結ぶこと。VISION、MISSIONに基づいた新しいVALUE、これをグランドベースにして、BXを社内外にもたらすためのUIのクリティブに入ります。このプロセスを整理してみます。

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BXを行うチームにより異なると思いますが、要件定義に基づき、様々な役割のプライヤーがチームで担当すると思います。それぞれが企業BXデザインの最適化を目標に、個人のアイデンティティ(ここではデザイナー固有の価値観や想いを意味します)を一旦脇に置き、顧客のバリューを最大化します。最もロジカルに答えが導き出せるプロセスです。しかしファッションデザイナーが行うと少し違ったプロセスになります。

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見て頂くと明解ですが、デザイナーの自己表現というフィルターを透過し、UIにデザイナーの香り(アイデンティ)が必ず残ります。しかも強く(笑)。図でいいますと赤の部分です。どちらが合理的か、あるいはパフォーマンスの最大化を達成できるかは分かりませんが、ビジネスライクに捉えると弊社のブランドエクイティをPR活動等にに利用出来る等のベネフィットがあるので、その点を評価して頂ける方からの依頼が多いです。弊社に限らずデザイナーにオファーされるときにご留意ください。。。

UIからのUX⇨BXを体験し、社員がエバンジェリストに


BXからUIとなるクリエイティブ(主に、CIとCIをべースにした名刺、封筒、請求書、イベントグッズ、弊社の場合はスタッフユニフォームなども含みます。)が完成しただけではBXの再構築とは言えません。

それは社員一人一人が企業=ブランドと捉え、自らが企業価値を社外にむけて広めていくエバンジェリストとしての役割を担って頂く事で、ステイクホルダー、既存取引企業、新規取引企業に新しいBXを届けることが可能になります。

その為に、社内向けのインナーブランディングとしての体験セミナーやイベントを行うことがあります。リーダー(CEO)が、なぜBXの再構築が必要なのか?新しいBXをどの様に届けるのか?などを、直接的に社員に届ける。このプロセスにより、言語化されたVALUEとUIがさらに明確になり、社外に伝えるUX(CX)のクオリティが高まります。

弊社の場合は、デザイナーによる、しつらえ(空間演出)も担当し、デザイナーの香りで空間を満たしUIの強度が増す体験も提供しています。(下記はデザイナーのコンセプトを表現した、○と□のイメージのケータリング演出)

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と、脳内で行う作業を書いてみましたが、順序が逆になったり、紆余曲折があります。それでも、古い言葉ですが膝詰めして、耳を傾け共に未来を見据える時間の共有は素晴らしい体験だと思います。

香り強めなBXがご希望の方はぜひ弊社にご連絡ください!(笑)

#BXデザイン #UX #UI #コンサルティング

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