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イェイツの詩は百の作品に散った

『イェイツ詩集(対訳)』イェイツ , (編集) 高松 雄一 (岩波文庫)

■内容紹介
 アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Buttler Yeats, 1865-1939)は,世紀末の詩人として世に出てから,第二次大戦がはじまる年に没するまで,ほぼ50年のあいだ,詩人として劇作家として絶え間ない創作活動を続けた.そうして,その間に大きなほとんど劇的と言っても良い変貌をとげ,その新しい史的世界が同時代のモダニズムの詩人たちや,更に若い当時の社会派詩人たちの賛嘆を勝ち得た.エリオット(T. S. Eliot, 1888-1965)は,このアイルランド詩人がProvincialism(地方色)という飾り付けを取り払って,裸の部屋に住む決心を固めたと称賛し(『異神を追いて』1934),オーディン(W. H. Auden, 1907-1973)は詩「イェイツ追悼」(1939)で「彼はいま百の都市に散った」と歌った.いずれも,イェイツが特殊相に頼ることをやめ,言葉の力そのものによって現代の人間に訴えはじめたことに注目し,同感の意を表しているのである.

出版社情報

すでに図書館で借りてから4週間で借り直して、さらに4週間で返却期限が来てしまった。思うようには読めない。読めたのは具体的な事件をイメージ出来る「Easter 1916」ぐらい。イェーツがアイルランド独立に寄与していた詩人ということぐらいは理解出来た。それにしても各レビューアーのレビューを読んで見ると、イェーツよりも二次創作(イェーツの詩のイメージから生まれた作品)から入ってくる人が多いのに驚いた。自分も大江健三郎から、大江健三郎の眼鏡でイェーツを読んでいた。むしろ原詩よりもその二次創作の広がりが面白い。

例えば映画『マディソン郡の橋』のボブ・ディランの詩から。ちょっと自分も調べてみたら映画『ロスト・ドーター』で「レダと白鳥」を取り上げていた。

大江健三郎『燃あがる緑の木』では、第二部のタイトル「揺れ動く(ヴァシレーション)」がイェーツの詩だ。ちなみにこの本での訳では「動揺」という訳が当てられている。大江健三郎の眼鏡で物語の中で読むイェーツは、元気が良くって、
歓びとは何だ?(What is joy?)と問いかけると伊能三兄弟とそれぞれの彼女が“Rejoice!”と答えるのだ。この詩もイェーツの中にあると思ったのだが見つからない。

そして、オーディン(W. H. Auden, 1907-1973)は詩「イェイツ追悼」(1939)で「彼はいま百の都市に散った」と歌ったということを知り、まさに百の作品の中にイェーツの詩は生き続けているのであった。


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