シン・俳句レッスン140
風
秋の風を感じたいと思ったのだが、今日(8/11)の朝は風がない。けっこう朝からだらだら過ごしてしまう。秋風の歌を聞こう。
「白い」というのは無常観という。「白秋」も風の意味なんだ。中国の故事ということで芭蕉の発見ではないという。それを踏まえた句ということか?石山の石が白いのは鳥の糞だとどこかに書いてあったような。
NHK俳句
今週はゲストが良かった。フォントデザイナーの木内縉太。この人俳人でもあったんだ。思うに俳句は文字化されているのに、いつまでも横書きでと思うのだ。そしてタテ書きにしたらフォントにもこだわりたいと思っているのだがいつまでも出来ないでいた。例えば、
なかなデザインがいい。ここのサイト俳句だけじゃなく、詩も出ているというか「詩歌梁山泊」の中の「木内縉太」ということなのか?
また黒岩徳将氏の「俳句やろうぜ!」コーナーがあった。全句講評講座の選者だった。
百人一句
前回で半分の五十句。「百人一句」は過去の「シン・俳句レッスン」から拾ってきているので、楽だった。
61 イナバウアー出来る出来ない春灯下 高根照子
「イナバウアー」も消えていく言葉だった?これ面白いかも。
62 水鉄砲水入れたる間も撃たれつつ 小川春休
山口誓子「スケートの紐むすぶ間もはやりつつ」のパロディだとか。山口誓子の句は飛び出さんばかりの早る気持ちだが、春休はすでに子供に撃たれているという。笑える間を作っているという。
63 わが細胞全個大暑となりにけり 小澤實
俳句は挨拶という小澤實。季語「大暑」を立てて詠んでいる。まさに今の季節というような句。
64 パラフィン紙夏の名前をかんがへる 宮本佳世乃
『天の川銀河発電所』より最近の俳人の句。「パラフィン紙」が俗で「夏の名前」が聖なるものの取り合わせだが、パラフィン紙が岩波文庫に昔付いていたのを思い出す。あれは紙を保護するためのものだったのか?日焼けしないためとか?これはなかなかの句だと思う。
65 水色の洗濯ばさみで鯵を干す 相沢文子
同じく『天の川銀河発電所』より。台所俳句かな。でも現代性の中に伝統があるような気がする。西鶴は即興で俳句を作る名人だったようで、大したことは言ってないようでやっぱ四千句は凄いか。生涯俳句作っても追いつけない。
66 あたたかなたぶらさなり雨のふる 小津夜景
もっとも旬な俳人か。フランス帰国子女で外国語が俳句の中に自然と挿入されているような。「タブララサ tabula rasa」は「白紙状態」の意。
67 ひあたりの枯れて車をあやつる手 鴇田智也
枯草が揺れて車を誘導しているような句だという。その手が幽霊っぽい。薄とかそう感じるかもしれない。車をあやつるというのが事故を予感させそうで怖い句なのかもしれない。ミステリアス。
68 出歩いてハートを撃ち抜かん業平忌 高山れおな
高山れおなはもっとも突飛な俳句を作る。ニュージランドのマリオ語とか。江戸俳句は一見バカ殿様風なのだが、「世(の)中よ」で切れ字で「とまれかくもあれ」はともかくという意味だそうだ。何気なく通り過ぎてしまうけど奥深いような感じなのか?
69 天使魚の愛うらおもてそして裏 中原道夫
「天使魚」はエンゼルフィッシュ。全共闘世代の俳人。エンゼルフィッシュの獰猛さを詠んだのか?
70 夏草や の跡←消しゴムで消した跡 福田若之
トリッキー俳句だ。「兵どもの夢」を消しているから、今ある夏草だけの現実ということか。奇妙なゴーストが通り過ぎていくような。『天の川銀河発電所』から。