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弟が兄を追悼するタヴィアーニ兄弟の映画

『遺灰は語る』(2022年/イタリア)監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ
出演:ファブリツィオ・フェッラカーネ、マッテオ・ピッティルーティ、ロベルト・エルリツカ(声)

“遺灰”は、無事に故郷へ辿り着けるのか——?
ノーベル文学賞作家の遺灰をローマからシチリアへ運ぶ、トラブルだらけの長い旅。
映画の主人公は、1936年に亡くなったノーベル賞作家ピランデッロの”遺灰”である。死に際し、「遺灰は故郷シチリアに」と遺言を残すが、時の独裁者ムッソリーニは、作家の遺灰をローマから手放さなかった。戦後、ようやく彼の遺灰が、故郷へ帰還することに。ところが、アメリカ軍の飛行機には搭乗拒否されるわ、はたまた遺灰が入った壺が忽然と消えるわ、次々にトラブルが…。遺灰はシチリアにたどり着けるだろうか――?!

タヴィアーニ兄弟といえば映画界の三大兄弟のイタリア代表です。ほかにコーエン兄弟、カウリスマキ兄弟がいるけど姉妹はいないのか?阿佐ヶ谷姉妹が映画を撮れば姉妹監督になるかと思ったが血の繋がりはないんだっけ。

そのなタヴィアーニ兄弟の弟であるパオロ・タヴィアーニ監督の作品で兄に捧げるとか字幕が出ただけで涙腺が緩んでしまう。タヴィアーニ兄弟は、文芸坐で『サン・ロレンツォの夜』を観て以来ファンなのだが、この映画でも『サン・ロレンツォの夜』を彷彿させるようなシーンがあった。

映画のストーリーはノーベル賞作家である劇作家のピランデッロの遺骨をローマから故郷のシチリアに送るロードムービー。ローマに遺骨が納められているのは本人の遺言を無視したムッソリーニ政権時のことで、戦後にそれならば故郷に帰そうとなったのである。その道中で遺骨の入った箱がなくなったり、飛行機の同乗者が縁起が悪いと搭乗を拒否したために飛行機が飛ばなかったり、遺骨との珍道中を描いていく。

劇作家ということで、途中で劇団の一団がホテルの窓からかか敬意を表すシーンが泣かす。音楽も葬送行進曲のような重たい感じでもなく、ロマの葬送曲のような哀愁感のある感じでよかった。

ラストのモノクロからカラーになってシチリアの海に遺骨を撒くシーンは『ユリイカ』を連想させる美しいシーンだった。そのシーンにパオロの兄を想う気持ちが出ていたと思う。

ただ最後にピランデッロの短編(遺作)を挿入したのは場違いのように感じた。それほどピランデッロに思い入れがないせいかも。イタリア人だったらぐっとくるものがあるのだろうか?


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