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近江の君は、二代目末摘花だった

『源氏物語 29 行幸』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第29帖「行幸」。冷泉帝の行幸が行われ、見物に出た玉鬘は帝の美貌に目が奪われる。いよいよ秘密を打ち明けようと玉鬘の裳着式の役目を内大臣に依頼するが断られてしまい、困った源氏は大宮を介して久しぶりに内大臣と打ち解けて話をする。玉鬘が我が子と聞かされた内大臣は感涙して引き受けるのだった。

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行幸(みゆき)と読む。鷹狩りの行幸なのだが、大臣共々お供をするのか?それを見物するのに女房連中が押しかける。「葵」での車騒動を思い出すがそういうことはなかった。ここでは玉鬘が内大臣や宮様を観察する伏線として描かれている。玉鬘が尚侍として仕えるということだが、ほとんど愛人を差し出すようなものかと思う。裳着式というのは脱がせるために着飾るのだろうと。

その前に内大臣に事実を告げなければと根回しの光源氏が向かうのは大宮という葵の母君であった。そう玉鬘も夕霧もみんな孫になるのだという事実を頭に入れておいたほうがいいかも。不幸の伏線があるような。

そんな中で末摘花のから祝儀の贈り物があるのだが笑われ役だった。

(末摘花)
わが身こそうられけれ唐衣(からごろも)君が袂に馴れずと思へば
(光源氏、戯言をその返事の余白に書き付ける)
唐衣また唐衣唐衣かへすがえすも唐衣なる

『源氏物語 29 行幸』

そして内大臣(頭の中将)に事実を語る光源氏であった。

(内大臣)
うらめしや玉藻をかづくまで磯がくれける海士の心よ
(光源氏)
よるべなみかかる渚にうち寄せて海士も尋ねぬ藻屑とぞ見し

『源氏物語 29 行幸』

その噂はたちまち近江の君にも伝わり嫉妬の対象となるのであった。まだ笑い話にできることだから怨念にはならなかったのだろう。近江の君は口さがないがそれで外に発散出来る性格なのだ。六条御息所はそういうことを外に出せずに内に内に閉じ込めた思いが怨念となってしまったのだ。ここでは喜劇で処理しているのだった。


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