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アメリカの「放浪記」か?

『To Leslie トゥ・レスリー』(2022/アメリカ)監督マイケル・モリス 出演アンドレア・ライズボロー/ オーウェン・ティーグ/ マーク・マロン/ アリソン・ジャネイ


宝くじで高額当選するも酒に溺れたことで行き場を失ったシングルマザーの姿を描き、主演のアンドレア・ライズボローが第95回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされたドラマ。

テキサス州西部に暮らすシングルマザーのレスリーは、宝くじに当選して高額の賞金を手にするが、数年後にはそのお金を酒で使い果たしてしまう。行き場を失ったレスリーは、かつての友人ナンシーとダッチのもとへ向かうが、酒に溺れる様子に呆れられてしまう始末。そんな中、スウィーニーという孤独なモーテル従業員と出会った彼女は、それをきっかけに後悔だらけの過去を見つめ直し、人生を立て直そうとする。

主人公レスリーを熱演したライズボローのほか、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」でアカデミー助演女優賞を受賞したアリソン・ジャネイ、「GLOW ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」のマーク・マロン、「猿の惑星」シリーズ新作にも出演が決まっているオーウェン・ティーグらが共演。監督は「13の理由」「ハウス オブ カード 野望の階段」などのテレビシリーズを手がけてきたマイケル・モリス。

先程レビューした『アシスタント』とは真逆な映画。働かずに飲んだくれて暮らそうという母親の物語。なんか感動的な話になっているのはやっぱ最後は王子様が現れるシンデレラストーリーになっているからだと思う。

根本的なところで母性の幻想というのがあるのだ。母親失格映画だが、最近は多いという。それまでは父親失格という父と息子の関係だったのだが、ここでは母と息子の関係だ。

シングルマザーだったんだと思う。彼女が宝くじを当てて金持ちになるとその金目当てに人が寄ってくる。そんな彼女はたかられて結局は落ちぶれていく。息子がいたのだが、そんな町が嫌になって出ていく。その時に息子は男とその愛人に引き取られたのだろう。でも子供は孤独だった。そんな女の風上にも置けないと言うので愛人が憎しみを募らせ街中に嫌な噂を広めていく。

結局保守的な町であり、彼女の母も教会の信者的なそれで母と娘の葛藤があったのだが、その部分は匂わすぐらいであまり語られない。つまりレスリーも母に幻滅して、母親的生き方を拒否して享楽的な生き方を選んだのだ。

ヒッピームーブメントの時代があり、そうした者たちも保守的になっていくなかで、レスリーだけはハチャメチャな人生。それはアル中ということもあった。人は何かにすがってないと生きられない。レスリーに取ってそれがアルコールだったというわけだ。それは病気と今では言われているが。

その克服に力を貸すのがモーテルの男。この町の者ではなく外部からやってきたので、レスリーのことはしらない。ただ以外に美人なので好意を持ったのかもしれなかった。この男の愛によって立ち直るというストーリーだが、根本には子離れがあったのだと思う。それまでボロボロになりながら息子から来た手紙を持っていて、それで息子の世話になるのだが、酒が止められなく問題を起こしてしまう。息子は義理の父?に頼って母親をどうにかしてくれと言って引き取らせる。街に戻ってきたレスリーはみんなの笑い者になっていた。

レスリーがモーテルの仕事をしながら自立の道を探っていく。そしてモーテルの前にある閉鎖した食堂を開くことを思いつく。モーテルの仲間の協力もあってオープンするまでになったが客は来ない。そして、最初の客がくる……….。

自立した女性映画と言えばいいのか?母性から逃げた女が見出す人生ドラマのような?感動的なのはその母性がまた食堂のおかみという母性を演出しているのだ。ただこっちは働く女性としての位置づけだから、結局無職のホームレスの女が自立して店を持つまでのシンデレラ・ストーリーになっているのだが、レスリー役のアンドレア・ライズボローの演技が良かった(アカデミー賞ノミネートだったが、取ってもおかしくない)。

あとヒッピー世代のセンチメンタリズムみたいなものが音楽とかにあるのかな。それは同時に保守的な共同体にもなっているのだが。

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