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啄木の哀しきユーモア

『石川啄木の百首』小池光

この「~の百首」シリーズ他に寺山修司と斎藤茂吉と森鴎外があった。短歌だけではなく俳句のシリーズもあった。これは特定の歌人について知りたいと思うときは便利な本である。見開きで右に啄木の短歌、左に解説(それほど詳しくないが一首解説なので十分である)。

ある日、ふと、やまひを忘れ、
牛の啼く真似をしてみぬ───
 妻子(つまこ)の留守に。

石川啄木『悲しき玩具』

この歌が啄木の最後に活字になった歌らしい。これ以降は寝たきり生活で亡くなっていく。「最後の一葉」ではなく「最後の一声」が牛の鳴き真似だったら、それを病室の外で妻子が聞いているとか。可笑しい悲しさ。この線だなのだ、啄木のセンチメンタルさって。


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