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妻の不在、母を求めて彷徨う親子

『大いなる不在』(2023年製作/133分/G/日本)監督:近浦啓 出演:森山未來 真木よう子 原日出子、藤竜也

卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。妻(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母(原日出子)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが――。

原作があるのかと思ったらオリジナル脚本だった。かなり文学的な内容というか、ひと世代前の妻は母親代わりなのか?というような映画。そういう映画が好きな人には面白いと思うが、話が複雑すぎるかも。というか、今の時代だとそこまで父に尽くす妻というのはほとんど夢の世界だと思えてしまう。またそういう世界を肯定してしまったらいつまでも男尊女卑のままの社会だろう。これはアメリカ映画では成り立たないと思うのだ。それは再婚相手の息子から家政婦のように利用され老後まで面倒みさせられたというように言われてしまうのだが、女性目線だとこんな都合のいい女はいないだろうと思ってしまう。ラストの海にある土地が海なる母というイメージなのかと思う。けっこう息子の立場としてみれば泣ける話ではある。相手の息子は憤慨するのだけれども。役者陣も揃っている中で原日出子が素晴らしい。男のご都合浪漫主義的映画。

純文学で女性が女神で男に尽くして消えるというパターンはよくあるが、結局不倫関係だったので、相手の息子は、母は男に利用されるだけ利用されたという視点が入っているので、今風なのかもしれない。

しかし息子は父の生き方を肯定して、それを新妻に語るのだから始末が悪い。「大いなる不在」は母である妻の心の中だった。認知症で父は返ってよかったのかもしれない。思い出は美しい。

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