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二つの「アウシュヴィッツのボクサー」の違い

『アウシュヴィッツの生還者』(2021年製作/129分/G/カナダ・ハンガリー・アメリカ合作)監督:バリー・レビンソン 出演:ベン・フォスター ヴィッキー・クリープス ビリー・マグヌッセン ピーター・サースガード ダル・ズーゾフスキー ジョン・レグイザモ ダニー・デヴィート


「レインマン」の名匠バリー・レビンソンが、アウシュビッツからの生還者ハリー・ハフトの半生を息子がつづった実話をもとに映画化!
1949年、ナチスドイツの強制収容所アウシュビッツから生還したハリーは、アメリカでボクサーとして活躍しながら、生き別れた恋人レアを捜していた。レアに自分の生存を知らせるため取材を受けたハリーは、自分が生き残ることができたのはナチス主催の賭けボクシングで同胞のユダヤ人たちに勝ち続けたからだと告白し、世間の注目を集める。しかしレアが見つかることはなく、彼女の死を確信したハリーは引退。それから14年の歳月が流れ、別の女性と新たな人生を送るハリーのもとに、レアが生きているという報せが届く。

似たような映画というより同じ人物だと思うがポーランド映画で『アウシュヴィッツのチャンピオン』という映画があった。

それに比べるとアウシュヴィッツの過去と現在の生活(当時のアメリカの亡命生活)を描いていて、アウシュヴィッツそのものよりもその後の彼の人生にスポットを当てている。それがアメリカ映画ならではのトラウマとしてのアウシュヴィッツ体験も家族のために乗り越えていくという感動ストーリーに仕立て上げているのだった。

アウシュヴィッツのボクシング時代もそれ以降のボクシングも勝利者という描かれ方はしていない。むしろボクシングは青春時代に引き離された彼女を探す手立てとなるのだった。彼がそんな過酷な状況でも生きて行かねばならなかったのは、彼女の存在があるからこそだった。

ただ実際に結婚するのは違う女性だった。彼女はユダヤ人ではないが彼に理解を示した。それは彼女も戦争で恋人を失っていたからだ。だから彼が戦後もアウシュヴィッツの彼女を探すのも亡霊だと思っていたようである。

そんないろいろな展開があって、子供に厳しすぎる父親像とか彼が浮気をしているじゃないのかとか。そんな中でついに彼は元カノ(軽い言い方だがアウシュヴィッツの彼女だ)を見つけ出す。そして、会いに行くのだ。そこの作りは非常に上手いし、アメリカ映画だと思った。アウシュヴィッツさえも乗り越えられる。

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