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短歌レッスン94

塚本邦雄短歌


坂井修一『塚本邦雄』

こういう神話モチーフの短歌は好きだ。蒼蒼は「あおあお」と読んだが解説によると「そうそう」の冷たく冴えた感じがいいとか。向日葵のまなこという時点で幻想だから、「あおあお」でもいんじゃないかな。空を鏡のように写す「まなこ」。

模範十首

今日は黒瀬珂瀾(くろせ からん)の幻想短歌十首。ここでけっこう影響されてしまうから、今日も幻想短歌が作れるようにと。

地下街を廃神殿と思ふまでにアポロの髪をけぷらせて来ぬ  『黒曜宮』
咲き終へし薔薇のごとくに青年が汗ばむ胸をさらすを見たり 『黒曜宮』 
鶸のごと青年が銜(くは)へし茱萸を舌にて奪ふさらに奪はむ  『黒曜宮』
僕たちは月より細く光りつつ死ぬ、と誰かが呟く真昼  『黒曜宮』
明け方に翡翠のごと口づけをくるるこの子もしづかにほろぶ 『黒曜宮』
語られてゆくべき大災害はひめやかに来む秋冷の朝   『黒曜宮』
男権中心主義(ファロセントリズム)ならねど身ひとつ聳(おそ)ゆるものをわれは愛しむ  『黒曜宮』
ピアノひとつ海に沈むる映画見し夜明けのわれの棺を思ふ  『黒曜宮』
十代の儀礼にかかり死ぬことの近しと思へばわれも楽しも 『黒曜宮』 
ささやかな地球に種子(たね)が落つる夜の月が背中をなぞるひとり寝  『黒曜宮』
違う世にあらば覇王となるはずの彼と僕とが観覧車にゐる 『黒曜宮』 

「けぷらせ」とは「ケプラせ」なのか「煙らせ」の古語なのか?分からないがアポロを殺したということだろう。だから地下の廃神殿になっているのだ。
「咲き終へし薔薇のごとく」胸の病の隠喩表現だろうか?
「奪ふさらに奪はむ」というリフレインの効用と赤い茱萸で口を汚した鶸のような少年。
作中主体(専門用語を使ってみた)は夜の人なんだな。鬼か?
滅びの美学か?それでも作者は鳥が好きなんだな。
「大災害がひめやかに」は「秘めやか」と「冷え」の掛け言葉かな。
「男権中心主義(ファロセントリズム)」の専門用語とか「聳(おそ)ゆる」とかの難しい漢字とか、こういうのが幻想性に繋がるのかもしれないが、ちょっと面倒くさい。
「ピアノ」の歌の方が日常性にありながら「棺」というイメージ結びつける幻想性。こっちの方がいい。ピアノから音楽性も感じるし。
幻想性は「死」と結びつくのは、それが非日常であり、誰にもやってくることだから。呪術としてのうたならばなおさらか?
「死」の代わりに「寝」や「夢」を置くことも幻想に繋がる。
白昼夢的な歌かな。観覧車が道具立てとしては幻想世界を導きだす。

高柳克弘『究極の俳句』「第二章 常識を疑う」

俳句の「俳」は、わざおぎ。つまり自分でない別の人を演じるということ。
俳句が「非常の文芸」と呼ばれるのも、時として人としての身を超えることがある。神(自然)の視点。俳句は元来人間中心主義にはならない。天上的視点。
シェイクスピアのフールという騙り手。既成の美や道徳に左右されず、疑いを持って物事の本質を見極める。第三者の視点。作品は作者だけのものではない。

「うたの日」お題

今日は間違いようがないすべて「みそ」だった。食べ物の短歌は苦手というか、幻想短歌に成りにくいよな。そこを敢えて挑戦するのがプロか?

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝その目覚め、来ぬ

この線がいいかも。もう一つだな。前半はいい。

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、朧げに来ぬ

囀りと朧げが反するな。「朧げに消え」がいいか?

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、おぼろ人居ぬ

幽霊にしたいな。

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、幽霊の母

民話のヒロインがいいな。鶴女房のような。

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、浅蜊女房

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、通夜に目覚めて

これでいいか?暗すぎか?幻想に目覚めるほうがいいな。

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、母亡き妹よ

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、母の幻影

「母の幻影」だとありきたりか?

囀りにみちびかるよう
目覚め
遠い食卓、味噌汁の朝、

これは第一案。視点の変換。亡き母から視線にする。ことにする。

囀りにみちびかるよう
懐かしの
味噌汁の朝、遠い食卓

結果

囀りにみちびかるよう懐かしの味噌汁の朝、遠い食卓
『 みそ 』 やどかり #うたの日 #tanka http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=3196f&id=20

うたの日

♪2つ。今日はあまり幻想的には出来なかった。「みちびかる」も寸詰まりの言い方だし。

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