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行ってみたい地獄巡り

『地獄遊覧 地獄と天国の想像図・地図・宗教画』by エドワード・ブルック=ヒッチング(著),藤井留美(翻訳),ナショナルジオグラフィック(編集)

それは長く人類にとって大きな謎だった。天国と地獄はどこにあるのか、どのような場所か、誰が住んでいるのか、広さや質量は、地上からの入口はどこか? 人類はずっと死後の世界を恐れ、想像し、描いてきた。

本書に収録されているのは、例えば死者の行先を選別するチンワト橋、地上にある地獄の入口、燃え盛るイスラムの火獄、悪魔の頭の形をした実がなる木ザックーム、「歯が鳴る館」「ジャガーの館」「刃の館」など順番に6つの試練を受けるマヤの死後の世界、『神曲』の天国と地獄を絵に描く挑戦、幸福諸島はどこにあるのか、飽食とごろ寝の桃源郷コケイン、地獄の幻視、死後の世界の地図……
古代エジプト、メソポタミア、ゾロアスター教、古代インド、仏教、ユダヤ教、北欧神話、マヤやアステカ、キリスト教などから、天国と地獄をめぐる神話とそれを美しく、あるいは生々しく表現した絵画・地図・彫像を紹介する。

『世界をまどわせた地図』(八重洲本大賞受賞)、『世界をおどらせた地図』、『宇宙を回す天使、月を飛び回る怪人』、『愛書狂の本棚』の著者による、知的好奇心を満たすシリーズ最新刊。

ナショナルジオ・グラフィックの図鑑だから絵が凄い。こんな地獄絵を見せられたら地獄に行ってみたいと思う。日本の地獄絵の方が稚拙な感じだが、その分どろどろしている感じだ。こっちはアートの世界だから、美しいというかそれで面白い。天国図もあるけどやはり地獄図に憧れてしまう。キリスト教世界の地獄図は特にアートとして観賞出来る。ギリシア神話とか西欧絵画の世界は芸術だった。ゾロアスター教とかは稚拙な絵の方がおどろおどろしい。エジプトとかインドの絵はカラフルで夢世界。


『図説 地獄絵の世界』小栗栖 健治 (著)

地獄絵の元になるのは源信(恵心僧都)『往生要集』からで、源信は『源氏物語』の横川の僧都のモデルとされるが『源氏物語』では地獄よりは極楽浄土の世界を説いている。

貴族社会では極楽浄土を好んだのにその後庶民に下って地獄絵が盛んになったようである(末法思想か?)。その普及に熊野比丘尼がいて、彼女らが地獄絵の絵解きとして説法したという。当時、女性の地獄落ちが多かったとされたというのは、そういう存在だったのだと思う。

絵解きは熊野比丘尼の商売だからそれ以上話を聞きたければ金を出せということで「地獄の沙汰」も金次第という言葉が生まれたという。火炎地獄の灼熱地獄と極寒地獄があるそうなのだが、日本は火山国なので火炎地獄が流行りとか。絵も赤主体でおどろおどろしい。

地獄から天国へ上がる双六もある。サイコロの目が南無阿弥陀仏だという。あと盂蘭盆の元になったと言われている。極楽絵よりも地獄絵が好まれるのは、やはりこの世は地獄だと思っていたのかもしれない。

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