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成金野郎の話です

『ゴリオ爺さん 』バルザック , 平岡 篤頼 (翻訳)(新潮文庫)

華やかなパリ社交界に暮す二人の娘に全財産を注ぎこみ屋根裏部屋で窮死するゴリオ爺さん。娘ゆえの自己犠牲に破滅する父親の悲劇。

題名が「爺さん」で損している。主人公は二十歳の学生ラスティニャックで、彼がパリの社交界に出て成り上がりを狙う野望のドラマ。その過程でゴリオ爺さんの哀しき人生やら脱獄囚であり「不死身の男」呼ばれるヴォートランから出世の方法を学ぶのである。

ピケティ『21世紀の資本』で引用された本。二人の敗者の教えを受けたラスティニャックの序章というべき物語で、最後に彼がパリの街を見下ろしながら「さあ、今度はおれとお前の勝負だ!」と宣言するところで終わる。壮大な序章だよな。愛と野望の経済小説の続きはどうなっていくのだろう?

ゴリオ爺さんの二人の娘が伯爵と公爵に嫁いでいる社交界でも美貌の叶姉妹っていう感じ。お互いに虚栄を張り合っている。着飾る衣装代で父親の脛は細っていくばかり。その姉妹に近づいて一目惚れしたのがラスティニャックで妹のほうと出来てしまう。

もう1人不死身の男の「脱獄囚」ヴォートランの物語が間に挿入されてくる。彼がラスティニャックに「パリで出世するなら持参金のある金持ちの娘と結婚することだ。その為にはどんな悪事も顧みないことだ。」というレールを実際に敷いてみせる。悪党だけど下宿に住む娘を貧困生活から救い出すある画策をするのだ。ヴォートランはゲーテ『ファウスト』のメフィストフェレス(案内役の悪魔)になぞらえる。(2015/01/31)


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