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末摘花は花(鼻)つまみものか?

『源氏物語 06 末摘花』(翻訳)与謝野晶子( Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第6帖「末摘花」。夕顔を失った悲しみに沈む源氏は、乳母の娘から聞いた常陸の宮の姫君・末摘花の話を聞き、興味を持つ。荒れた邸の庭から琴の音を聞いていると、あとをつけて来た頭中将に気付く。二人は競争して末摘花に手紙を送るが返事は来ない。ようやく源氏は末摘花と関係を持つ。翌朝、姫君の顔を見た源氏は驚いた。並外れて大きく赤い鼻を持つ、普通とは言い難い風貌だったのだ。

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以前、まるごと一冊『源氏物語』というような解説本を読んで「末摘花」はアヴァンギャルドなパンク娘と紹介されていた。黒貂の上着は野性味溢れる姿で(今読むとオールドファッションということなのか)没落貴族の娘として自立している。そして一人で楽器を演奏して光源氏に興味を持たれるのある。さすがにアヴァンギャルドとは思わないが、どうしてここまで「末摘花」を酷く描くのかとフェミニン系の声もあるようで。たぶんそれは若紫との対比の意味で「末摘花」の物語はあるのではないかと。

そういう意味では可憐なん若紫が山奥に暮らしていたら第二の「末摘花」にならないとも限らす、そこに紫式部の都の女が一番という上位意識(プライド)が伺えるような。

また例によって「末摘花」からタイトルの元になった和歌を抽出します。和歌の表記は与謝野晶子訳ではなくて、角田光代訳の本によっているのであしからず。

正月の贈り物として末摘花が光源氏に衣装に手紙を添えたがまったくどうでもいい代物だった。

(末摘花)
唐衣君が心のつらければ袂はかくぞそほちつつのみ
(その文にいたずら書きする光源氏の和歌)
なつかしき色ともないしに何にこのすゑつむ花を袖に触れけむ

末摘花はべにばなのことで、色褪せた(古びた)赤ということで、若紫は梅の花の蕾に喩えていた。鮮やかな花になることを願ってはいるが赤い花だけは紅梅でも好きになれないとする光源氏であった。だから紫なのか?

(光源氏)
紅の花ぞあやなくうとまるる梅の立ち枝はなつかしいけれど



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