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勝者だけのオリンピックとは違うドキュメンタリー

『迷子になった拳』(ドキュメンタリー/2021)監督今田哲史 出演金子大輝/渡慶次幸平/ソー・ゴー・ムドー/ロクク・ダリル/浜本“キャット”雄大

解説/あらすじ
拳にはバンテージのみを巻き、通常格闘技の禁じ手がほとんど許される「地球上で最も危険な格闘技」と言われるミャンマーの伝統格闘技・ラウェイ。その一方最後まで立っていれば“二人の勇者”として讃えられる神聖な「最も美しい格闘技」でもある。 軍事政権から解放され民主化が始まったばかりの2016年から、ラウェイに挑戦する選手や大会関係者を追う。

タイのムエタイに似ているのだが、ほとんど素手で金蹴り意外なんでもあり(寝技はないけど)の格闘技。試合中は民族楽器の生演奏で試合を盛り上げたり、勝利者の踊りがあったり、伝統的な儀式としての格闘技なのだ。そのミャンマーの国技に近い格闘技に日本人ファイターが挑戦する。

最初は高校時代に体操をやっていた青年で大学で格闘技に興味を持ち、母の反対を押し切ってラウェイに挑戦するためにミャンマーまで武者修行をしにいく金子大輝にスポットを当てたのだが、日本でラウェイの興行が立ち上がり、そこに噛ませ犬としてもう引退間近とされた渡慶次幸平が試合には負けたのだが、その素手で殴り合う(音楽のリズムが染み込んだと言っていた)快感を体験してさらに挑戦し続けるうちに人気者になってしまった。

ラウェイは日本ではキックボクシングで芽が出ない選手の行く場所みたいに言われたが、素手で殴り合う一発KOもあり、顔面血だらけの壮絶な試合が多い。それでも倒れなければ判定はなく両者の勇姿を称えるのだ。ミャンマーの選手に比べて日本人の選手の甘さが最初の頃はあり、異種格闘技戦でも厳密な体重制ではなかったりして、ミャンマー側からは問題視されて興行も一度は挫折する。

それがタイトルの「迷子」の意味なのだが、その大切な日本の試合で負けてしまった金子選手のお母さんが息子の甘ちゃんぶりを叱るシーンがあるのだが、そこは普段はそういうシーンは見られない内輪の話なのに面白かった。興行の裏側とかの話も興味深いものがある。ミャンマー側は日本の相撲のように考えているから、日本の金儲け的な興行とは違うのだ。

金子選手の不甲斐なさと入れ替わり主役はいつの間にか渡慶次選手になっていた。今日の上映会でもゲストで来ていたけど人気が出てくる人柄も伺えた。ミャンマーの学校づくりのNGOも立ち上げミャンマーでも人気者になっているという。中国でも格闘技が流行っているようだし、バブルになると流行るのか。一攫千金の夢。ミャンマーでは違うけど(だから日本の興行になるのだが)。


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