見出し画像

未だに占領時代の影響下にある日本の黒い霧

『新装版 日本の黒い霧 (上) 』松本清張(文春文庫)

戦後の怪事件にメスを入れた不朽の名作
権力の圧力で真実解明を妨害された怪事件の封印を解いた衝撃の大作。名推理として名高い「下山国鉄総裁謀殺論」「帝銀事件の謎」等

担当編集者より
戦後日本で起きた怪事件の数々。その背後には、当時日本を占領していた米国・GHQが陰謀の限りを尽くし暗躍する姿があった。しかし、占領下の日本人には「知る権利」もなく真相を知る術もなかった。抜群の情報収集力と推理力で隠蔽された真相に迫った昭和史に残る名作。名推理として知られる「下山国鉄総裁謀殺論」など。
目次
下山国鉄総裁謀殺論
「もく星」号遭難事件
二大疑獄事件
白鳥事件
ラストヴォロフ事件
革命を売る男・伊藤律

下山国鉄総裁謀殺論

その裏にGHQの内紛があって、米軍と国防省の対立があったということで、敗戦後の日本での右翼や軍人勢力を一掃するのに共産党の力が必要だったということで、国防省は彼らは支援していた。その中には赤化したリベラリスト(GSの長官ホイットニーは日本の憲法草案に関わっていた)も含んでいたので、当時の日本国憲法もかなりリベラルな内容になったというのは、どこかで読んだことがある。それが過ぎると今度はアメリカのアジア進出があり(朝鮮戦争)そのために赤狩り(レッドパージ)が行われた。そのために当時の国鉄の組合は共産党員も多かったので、そうした共産党員を解雇するのに組合と対立していたということなのだ。それは見かけ上は人員整理(国鉄の余剰人員)に見えたが裏には米軍のレッドパージがあったということだ。

その推理の中で米軍のための軍用列車があり、それで死体を運び線路に突き落としたという推理が鉄道の時刻表と共にあって、鉄道が好きすぎるのか、この推理は面白い。その軍用列車は田端(品川機関庫)から出たという。

また自殺説を否定するのに貸金庫に隠していた春本を処理しなかった下山総裁という考えも面白い。貸金庫には当日金を引き出しに行っていたという(スパイへの情報料)。そのスパイの情報によりGHQの裏側を知りすぎたとして暗殺されたという。拉致して、服を脱がせて替え玉を用意したという。その替え玉が着替えていろいろ目撃されることで捜査を混乱させたのだ。松本清張のドラマでも目撃情報は信用おけないものになっていた。

この事件を元に後の松本清張ミステリーに発展していくと思うのだが、この推理は下手なミステリーよりも面白い!

二大疑獄事件

米軍占領時期と安保条約後の日本独立後のふたつの疑惑事件で、占領期の「昭電事件」は「下山事件」も関連するのだがGHQ内部での勢力争いでGS(国務省より)とG2(米軍より)により最初の戦後直後は右翼勢力や軍部解体を目論んだGHQはルーズベルトのニューディール政策による進歩的軍人が多くいたので、憲法草案も当時のリベラルな内容になっているが、次第に共産勢力の拡大や朝鮮戦争時にもありG2は右傾化していく。その中でレッドパージ政策もおこなわれていくのだが、そうしたアメリカの国政を受けて日本も左右されていくのだった。よくアメリカ軍による支配が日本の政治内部の闇であり、その影響は造船や鉄道の支配にあらわれてくる。そういう中で汚職政治の構造が現代でも続いているのか?ロッキード事件の田中角栄の失脚もそんな事件だったような。黒い霧はアメリカ軍部の影響下にある日本の構図がいまだに占領下のままなのだと知らしめる。

革命を売る男・伊藤律

これはソ連スパイ事件が絡んでくる米ソの綱引きの(スパイ合戦)中で共産党も絡んでの伊藤律がソ連のスパイとして働いていたということだが、今では無実だったという報道もあるような闇の事件だった。松本清張は共産党寄りだったのでそのニュースソースで推理したのではないかと思う。このへんも日本はスパイ天国だと言うし、黒い霧が立ちこめているのだろうか?それは未だに日本が米軍の属国として、支配されているからなのかもしれない。日本は米軍のアジア支配の最前線なのだ(米ソ対立、今は米中対立か)。


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,357件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?