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蛸壺やはかなき夢を夏の月(芭蕉)

町山智浩「第93回アカデミー賞 クロエ・ジャオが監督賞受賞」『ノマドランド』赤江珠緒 たまむすび 2021年04月27日(火)放送 https://youtu.be/K17mfhneFlo

このれを聞いて、がぜん『オクトパスの神秘』を見たくなったのだが、町山さんが言う通りの雌タコと素潜りダイバーとの「恋物語」だった。最初は鮫がタコの足を引きちぎって喰っても、タコの足美味しそうだとしか思わなかったが、そのあとどんどん衰弱し、足一本失っただけであんなダメージ受けるのかと思った(8本もあるから)。そして、驚いたことにタコは足を切られても生えてくるということ。足が生えて完全復活。自然って凄すぎ!二度目にサメに襲われた時は、陸に上がったり海藻を巻きつけたり、貝で防御したり、知恵を働かせて鮫から逃げる。そして、ついに一番安全な方法、サメの背中に乗るという(ギャグみたいな話だが)、ほんと賢いぞ!背中に乗ったタコは食べられないのでサメは諦めて帰る。それを知ると降りて安全な巣穴へ。

タコが魚と遊ぶというシーン。この人と遊んでいたから珍しいことではない。魚は遊んでいたのだろうか?食べられると思って逃げていたような。タコをこんなにも愛おしい存在だと思ったのは、最初にふれあいがあった。ダイバーの手を足で握手するような『E・T』でお馴染みのシーン。その出会いからタコと触れ合って接触したからこそ、これほど親近感が湧いたのだろう。ただ見ているだけだと美味しそうとしか思わないのだが。

このドキュメンタリーは自然との接触の仕方を教えてくれる。最初に鮫に足を食べられたときは、つい人間が手を出してしまいそうになる。しかし、サメに足を食べられたことから、タコの足が再生し、二度目には鮫を欺く知恵まで見られることになった。そして、このダイバーもそうした自然からコミュニケーションの仕方を学ぶ。主に息子とのことがこのドキュメンタリーで出てきたことだが。

そして、悲しいタコの一生。タコも人間と交流しても子孫を残すという生命としての本能があるから人間よりは雄タコだった。その後に卵を産んで守り通す。その役目が終わると「あしたのジョー」のごとく真っ白になって力尽きる。本当にこのラストは感動する。最後は無残な姿だけど、それが自然界の掟なんだろうな。自然に生かされ殺されていく。人間は罪深い生き物だ。


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