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スター「悲劇の」誕生

『エルヴィス』(2022/ワーナー・ブラザース)監督:バズ・ラーマン 出演:オースティン・バトラー/トム・ハンクス/オリビア・デヨング/ルーク・ブレイシー/ケルヴィン・ハリソン・Jr/コディ・スミット=マクフィー

解説/あらすじ
若き日のエルヴィスは、ルイジアナの小さなライブに出演し、当時誰も聴いたことのなかった”ロック“とセンセーショナルなダンスを披露する。若者たちは”彼“に魅了され、次々と叫び、熱狂する。その瞬間、やせっぽちの無名歌手は、スーパースターに変貌した―。熱狂が瞬く間に全米へ広がるにつれ、センセーショナルすぎるロックとダンスは社会の大きな反発も生んでゆく。

エルヴィスのイメージは安岡力也だったのがだいぶ改善され、尾崎豊ぐらいになった。晩年のイメージしかなかったわけで、デビュー当時の荒々しさは、映画では盛っているところがあると思うが、なかなか好感度が高かった。エルヴィスとその悪徳マネージャーのショー・ビジネスの内幕ものという感じで、エルヴィス役のオースティン・バトラーは勿論いいのだが、トム・ハンクス演じる悪徳マネージャーがリアルだった。

オープニング・シーンのブルースの淫売宿とゴスペルの教会の音楽に惹かれるエルヴィスの少年時代のシーンは良かった。この映画はサウンドトラックが抜群にいいのだ。エルヴィスだけではなく、その頃の黒人音楽やヒット曲がアクセントになっていた。

映画『エルヴィス』オリジナル・サウンドトラック|7月1日劇場公開を記念しキング・オブ・ロックンロール=エルヴィス・プレスリーを大特集 - TOWER RECORDS ONLINE https://tower.jp/article/feature_item/2022/06/16/0104

無論オースティン・バトラーの腰振りエルヴィスも見所になっている。ただエルヴィスの芸能生活をすべて見せようとするのか長尺映画なので、途中で眠くなるところはあった。だいたい大スターのパターンは薬とか人気凋落とか似てくるので。エルヴィスのエピソードで軍隊入がそんな理由だったのかという。不良イメージを母の死によって孝行息子に変換させる悪徳マネージャーの手腕の見事さ。韓国のグループもこの路線なのかと思ったり。日本は今のところこういうのはないがそのうちに出てくるのだろうな。

イメージとして黒人音楽のもの真似だけと思っていたが、そこにリスペクトも入っていた。キング牧師とか魔はリア・ジャクソンに対する思いとか、本当に関心があったのかどうかはわからないが、だいぶリベラル寄りのエルヴィスになっていた。エルヴィスよりもトム・ハンクス演じる悪徳マネジャーがこういう人がいるんだなと芸能界は恐ろしいところだと素直に感じた。日本でもあるんでしょうね。

でも悪徳マネージャーに言わせると、ファンが望むものをエルヴィスが与えすぎたということなんだろう。ファンは好きになるだけだからスター本人のことなんか考えない。そこはファンも自己中心的で、その為に言われるままに薬を打っても歌い続けなければならないエルヴィスもいたわけだった。

『リコリス・ピザ』で町山さんが言っていた『スター誕生』のエピソードも出てきた。白いステージ衣装のひれひれは日本の歌手も真似していたよな。ほとんどスターが、男性ヴォーカリストはエルヴィスの影響を受けていたのかもしれない。

エルヴィスのやりたいことがいまいち良くわからなかったのは(なんであんなマネージャーの言いなりになるのかとか)、結局ショー・ビジネスの世界はハイエナ野郎がいるということなんだろうな。利用されるままに自分の意見なんて通せない契約問題とか、スターの代償なのだろうか?おニャン子もそういうやからに喰われ続けるのか?

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