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奇跡の映画カール・テオドア・ドライヤー『怒りの日』

『怒りの日』(デンマーク/1943)監督カール・テオドア・ドライヤー 出演リスベト・モーヴィン/トーキル・ローセ/アンヌ・スビアキア/シグリ・ニーエンタム

解説/あらすじ
中世ノルウェーの村で牧師アプサロンと若き後妻アンネの夫婦は平穏に暮らしていた。しかし、前妻との一人息子マーチンが帰郷するとアンネと親密な関係に。そんな折アプサロンが急死し、アンネが魔女として死に至らしめたと告発を受けてしまう…。陰影を巧みに使ったモノクロームの映像美で、魔女狩りが横行する時代の複雑に絡み合う関係性を映した衝撃作。

オープニング、モーツァルトの「怒りの日」が流れ聖書の絵図の言葉。そこで「怒りの日」の聖書の言葉を知るのだが、すぐに魔女裁判になる。その婆さんの演技がなかなかいい。捕まるとわかると涙を流して助けを乞う。でも魔女裁判の時は強気の頑固者。結局火炙りにされるのだ。

拷問もシーンも1943年だとハード。婆さんを裸にして滑車で吊るすのだ。吊るすシーンはさすがになかったけど、上半身裸である。この映画が作られたのがナチス時代だと考えるとナチスの拷問と重なる。婆さんが涙を流して、魔女だと告白するのだが、その涙がラストの若妻の魔女裁判の涙と重なる。この涙は『裁かるるジャンヌ』の涙とも重なるのだ。涙のクローズアップの相貌がそれぞれ違うがドライヤー・マジックと呼んでもいいリアリティなのである。

若妻は牧師の息子を誘惑したので、キリスト教精神から言えば魔女と言えば魔女だった。ヒロインの表情の変化が、敬虔な妻から同年代の息子を愛する女で、最後は夫を欺く女の顔になっている。それは婆さんの魔女の表情の変化とも重なる。つまり女は豹変するから魔女だというキリスト教的な教えがそこにある。

敬虔さとずる賢さの二面性。それは魔女ではなく、まさしく人間の相貌性だ。第一に妻と死別した年老いた牧師が若い娘を妻にした欲望がある。厳格な姑の想像がそのままドラマ(もはや昼メロ)になったのだが、この魔女性は凄い。自然の感情から来る不倫ものだから当然の結末なのだが。

最初の魔女を火炙りにするときに少年合唱団が聖歌隊が「怒りの日」を歌うなのがなんとも。その構図。指揮をする牧師、裁かれる魔女、そして、清らかな子どもたちの声。

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