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My Sisterは「ドリームランド」の夢をみる

気鋭監督のマイルズ・ジョリス=ペイラフィット『ドリームランド』を観た。この映画それほど期待していなかったが、すごく良かった。というかこれは『俺たちに明日はない』のリスペクト作品である(監督のインタビュー記事によるとあえて『俺たちに明日はない』を観なかったという)。脚本が素晴らしい(マーゴット・ロビーがその脚本に惚れてプロデュース。自ら女銀行強盗アリソンを演じている)。ボニーの分身のような女銀行強盗アリソン。指名手配され納屋に怪我して隠れている。

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17歳の童貞青年役はフィン・コールという22歳の俳優が熱演。ユージンは最初は指名手配犯人アリソンの懸賞金を得ようとも考えていたが、怪我をした(銃撃されて)アリソンの魅力に憑かれてしまう。この銃弾を腿から除去するシーンがエグい。アリソンの悪女的魅力。銀行強盗の後に銃撃戦でクライドみたいな男が死んで男の残した時計をユージンに送るのだ(愛の誓いを刻んだ代物)。

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『ドリームランド』の背景となるのはアメリカ開拓者の歴史だ(『ミナリ』の1930年代版、プア・ホワイトの移民の歴史『怒りの葡萄』の世界。それを象徴させる砂嵐のシーン。)産みの父親は、妻と共にこの不毛な土地に開拓者としてやってきたが、どうにもならなく夢を求めてメキシコへ単身逃げてしまう。そこで生死不明。息子は父の夢見がちな性格を受け継ぎ、家族と対立(不毛な土地に馴染むことはない)、そこでアリソンに出会うのだ。

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最初は懸賞金を得ようとして。その兄の半生を妹が語る。妹の視点が兄のロマンチシズムを超えてコメディ(喜劇的)として描いている。「ドン・キモーテ」のように。「ボニー&クライド」という先行するギャング物語があり、それを模倣するパルプ・フィクションの悲喜劇。父の喪失の物語は兄の喪失物語に継承される「ドリームランド」で生きている妹の夢物語なのだ。兄は確実に生きている。「ビリー・ザ・キッド」の伝説のように。


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