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悪夢の軍事クーデター

『夢のアンデス』(チリ/フランス/2019)  監督パトリシオ・グスマン 出演フランシスコ・ガシトゥア/ビセンテ・ガハルド/パブロ・サラス/ホルヘ・バラディット

解説/あらすじ
1973 年 9 ⽉ 11 ⽇、チリ・軍事クーデター。世界で初めて選挙によって選出されたサルバドール・アジェンデの社会主義政権を、⽶国 CIA の⽀援のもと、アウグスト・ピノチェトの指揮する軍部が武⼒で覆した。ピノチェト政権は左派をねこそぎ投獄し、3000 ⼈を超える市⺠が虐殺された。南⽶ドキュメンタリーの巨匠パトリシオ・グスマン監督は、40 年以上にも渡りチリの弾圧の歴史を描いてきた。「光のノスタルジア」(10)「真珠のボタン」(15)に続く⼀⼤叙事詩最終章となる本作は、かつて「チリの闘い」(1975-1978)で映像に残した、永遠に失われた輝かしいアジェンデ時代の歴史と、クーデター後、新⾃由主義の実験の場となってしまった祖国の現状を、アンデスのように俯瞰した視座から改めて⾒つめ直す。

南米のドキュメンタリー監督パトリシオ・グスマンはチリ・軍事クーデターで亡命生活を送っている。彼が年々募っていくアンデス山脈の郷愁。日本人が富士山に寄せる気持ち(関東圏だと思うが)のようなものか。チリの80%が山だというのだから富士山以上なのかもしれない。

サンティアゴの地下鉄の駅に描かれているアンデス山脈は誰も振り向きもしない(銭湯の富士山のようにすれば良かった?銭湯がないのか?)。都市はアンデスに背を向けているという。たぶん東京もそうだ。

車で東京を下る246を帰るときに、いつも見えない富士山が見えると嬉しくなった。また、富士山が見える所に飛ばされた(左遷という奴です)時は富士山が力になってくれた。そんな想いもある富士山は、アンデス山脈と同じなのかもしれない。

亡命生活だからなおさら郷愁の思いが募るのだろう。そして、軍事クーデターの後もチリに残ったカメラマンもいた。

当時は20分しかフィルムを回せなかったのだが、今ではスマホで手軽に撮れてハードディスクに記憶出来るので無限大だ。しかし、一般人は政府が弾圧するところは撮れないという。彼は果敢に記録を残すのは次世代のため。そして、クーデター時の映像が出てくるのだが、今の香港やアラブのデモと同じだった。抗議する民衆に 催涙弾や放水車を浴びせる軍隊。警棒で殴る蹴るの非道さだ。抗議の歌としてベートヴェンの「歓喜の歌」が歌われていた。

チリの軍事クーデターは、アメリカの傀儡政権を作るために仕組まれたものだ。その後に自由主義経済になって、アメリカの経済学者がやってくる。竹中平蔵みたいな奴。格差は広がり、アンデスの山から取れる銅は多国籍企業が独占し、私有地で立ち入れないアンデスが広がっているという。

「9・11」というとラテン・アメリカでは、チリの軍事クーデターを指すという。ネオリベがはじまったのもチリからだという。

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