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カラオケシーンは昭和臭いオッサン映画になってしまった

『花腐し』(2023年/日本/137分)【監督】荒井晴彦【原作】松浦寿輝
【キャスト】綾野剛,柄本佑,さとうほなみ,吉岡睦雄,川瀬陽太,MINAMO,Nia,マキタスポーツ,山崎ハコ,赤座美代子,奥田瑛二

朽ちてなお、生きていく。芥川賞受賞作「花腐し」を荒井晴彦が大胆に脚色。ふたりの男とひとりの女が織りなす、切なくも純粋な愛の物語

原作が松浦寿輝の芥川賞受賞作。読んでなかった。荒井晴彦が脚本・監督で前評判が良かったが。(ピンク)映画産業の斜陽化と心中した女性を巡る二人の男の与太話。斎藤美奈子が男の作家はヒロインを殺したがると言っていたが、死なすことによって思い出の永遠化みたいな気持ちになるのかもしれない。「思い出は美しすぎて」のパターンだ。

「卯の花腐し」というのは俳句の季語にもなっているが元は『万葉集』だったとは知らなかった。

春されば卯の花腐し我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも  詠み人知らず

『万葉集』

梅雨時期に咲く「卯の花」を腐らせるような長雨が続くということで雨のシーンが多く印象的である。日本映画は晴れよりも雨の方が合うのかな。湿っぽい抒情性だろうか?当然セックスも絡んでくる。

二人の男、綾野剛と柄本佑の語り合いから一人の女性(さとうほなみ)を巡る話なのだが、ピンク女優前の演劇少女だった頃のシナリオライターを目指す青年との恋バナとピンク女優になってからの落ちぶれ映画監督との同棲生活が一人の女性の変化として描いているのが映画として成功していると思った。それは初々しい演劇少女から監督と同棲生活を始める蓮っ葉(擦れてはいないのだが、大胆な行動をする)女性への変化。その同じ女性を語りながら時間軸のズレがあるから、男二人はそれが同一人物を語っているとは思わない。その面白さもあった。

「卯の花腐し」というように腐っていくのは二人の男なのだが、女は卯の花が咲いている状態で二人の運命の女という感じなのだ。それは一人は去って行き、一人は死んでしまったからなのだが、綾野剛の方は親友の映画監督と心中してしまったので落ち込みも激しかったのだ。柄本佑は自分の未熟さ故に彼女が去っていったのだが、演劇に打ち込む純粋な彼女だったのだ。

その思い出を残された男二人で語る姿に滑稽さがあり、また去って行った女への後悔もあるのだが、そのシナリオを柄本佑が書いていたという二重構造が面白かった。そのシナリオ綾野剛を訂正しようとするのだ。すでにそれは叶わぬ夢であるのだけれど。ラストのカラオケ・デュエットシーンが、荒井晴彦のオヤジっぽさが出てしまったように感じた。あの場面は無い方が良かった。昭和の映画だよな。山崎ハコが出てくるぐらいだから。



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