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ゴダールの音楽鑑賞会(追加ゴダール映画祭)

〈追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭〉

▶『パッション』Passion
1982年/88分/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/ヴィデオ撮影:ジャン゠ベルナール・ムヌー
出演:イザベル・ユペール(イザベル)、ミシェル・ピコリ(ミシェル)、ハンナ・シグラ(ハンナ)

欧州古典絵画の数々を活人画として再現した芸術映画製作に取り組む野心的ポーランド人監督。国際的製作班による「(完成しない)映画作りを描いた映画」としての側面を備える本作は、夏の陽光に満たされたかつてのゴダール映画『軽蔑』を冬の光の中で再創造する。ここでも物語は芸術(創造行為)と生活(性や金銭を巡る諸問題)の間を往還するだろう。

1963年ブリジッド・バルドー主演『軽蔑』(ホメロスの世界を描く)を1982年にポーランド制作チームが再現(ドラクロアやゴヤの絵画の世界)しようとする映画のための映画というようなメタフィクション的作品。『軽蔑』は地中海の陽光溢れる太陽の元だったが、こちらは冬でスタジオ撮影。最新スタジオで映像美は堪能できるのだが、監督は自然光には敵わないと不満たらたら。

ポーランドということもあり、連帯でフランスの工場労働者を役者として使うことになるが、いろいろトラブルが。映画作りの裏側を見せる映画か。監督の前で体操選手のように柔軟なスタイルを見せるウェートレスとかスタッフの不倫関係とかトラブルばかりに見舞われて、撮影は進まない。

オープニングの飛行機雲を撮るシーンだけでも映像美が感じられるのだ。スタジオ撮影もかなり凝った作りで絵を再現している。

ドラクロアやゴヤの絵そのものが映画になったような映像美にクラシック音楽の臨場感。ゴダール・ファンかそうでないか試される映画かな。途中かなり眠くなってしまったが。

イザベル・ユペールが出ていたのはあとから気づいた。若い。フランスの大女優だけどゴダールと共演していたとは知らなかった。美人というのではないが存在感のある役どころだった。

▶『カルメンという名の女』Prénom Carmen
1983年/85分/脚本:アンヌ゠マリー・ミエヴィル/撮影:ラウル・クタール、ジャン゠ベルナール・ムヌー
出演:マルーシュカ・デートメルス(カルメンX)、ジャック・ボナフェ(ジョゼフ)、ミリアム・ルーセル(クレール)

テロリストと思しき集団と共に銀行を襲撃する美貌の娘カルメンと、彼女と恋に落ちた警備員ジョゼフがたどる数奇な運命。そこにカルメンのおじで精神病院に入院中の元映画監督ジャン(ゴダール自身が演じている)およびベートヴェンの弦楽四重奏曲を練習する演奏家集団が交差しつつ、悲喜劇的なラストですべてが合流する、ゴダール流“カルメン映画”。

こちらも映画内映画のメタ・フィクション。ゴダールの孫娘?が「カルメン」を翻案した映画を撮るから別荘を貸せという。そこで主演の男とカルメン的行為をして、ゴダールの過去の映画をなぞるような、ゴダール・ファンか試されているような映画だった。家で観たら爆睡していたな。この映画も映像と音楽がいい。ベートヴェンの弦楽四重奏曲が繰り返し出てくる。そうだ、ゴダールの映画観てベートヴェンが好きになったのだ。最後にトム・ウェイツがかかるという。後でプレイリスト作ろうかな。

『ゴダールのマリア』

『ゴダールの探偵』


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