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即物的なポルノ映画だが.........

【ジャン=リュック・ゴダール映画祭】
『ゴダールのマリア』(1985年/スイス、フランス)脚本:ゴダール 出演:ミリアム・ルーセル(マリー)、ティエリ・ロード(ジョゼフ)、ジュリエット・ビノシュ(ジュリエット)

聖母マリアをスイスの女子学生マリーへと変換し、イエスの処女生誕の物語を現代に置き換えて語り直した、ある意味挑発的な作品。カトリックの教義に言及しつつ、マリー役のルーセルが全裸となる場面があるためヨハネ・パウロ二世に批判され、上映禁止措置がとられた国もある。また抗議活動や爆破予告の対象となった劇場もあり、各国で物議を醸した。

「感動ポルノ」というコトバと逆の意味で即物的なポルノというゴダールの映画内映画というような。テーマとしては現代のマリアはブルジョワ的な娘で、魂とか身体とか考えならも愛を求める女性だが、妊娠してお決まり通りのブルジョワの恋愛劇をするという内容。

ただゴダールの映画なので一筋縄ではいかない。女優は美人だし惜しみもなく裸になってくれるのだが、エロスがないのだ。即物的な感じはポルノという感じだが、日本のポルノというと「日活ロマン・ポルノ」に代表されるようにエロとロマンがセットになっているのだが、そういったものがない。事物的な女性のボディーと自然の風景(観光写真のような)、そしてクラシック音楽の断片が繰り返し流される。感情移入されるのを中断させるような場面が次々に代わり、ストーリーはブルジョワ女学生のラブストーリーなのだが。最後は子供を産んでありきたりなブルジョワ生活というような。その中にキリスト教の精神みたいなものも皮相的に描かれているのだ。何よりミリアン・ルセールの均整のあるプロポーションのヌードが見所と言えば見所かもしれない。彫像のような美だけどエロさはないのだ。それは自然の風景も美しいのだが感情が揺さぶれないのはただ美しいだけだからなのだが、ただ映画としてはゴダールの映画という批評映画として一見の価値はあるのだと思う。それは映画という信仰かもしれない。

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