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教唆罪とは?共犯関係な蟻地獄映画

『蟻の王』(2022年製作/140分/G/イタリア)監督:ジャンニ・アメリオ 出演:ルイジ・ロ・カーショ、 レオナルド・マルテーゼ、 エリオ・ジェルマーノ、 サラ・セラヨッコ


解説
「ナポリの隣人」「家の鍵」などで知られるイタリアの名匠ジャンニ・アメリオが、同性愛の許されない時代に恋に落ちた詩人と青年をめぐる「ブライバンティ事件」の実話をもとに描いたヒューマンドラマ。

1960年代のイタリア。ポー川南部の街ピアチェンツァに住む詩人・劇作家で蟻の生態研究者でもあるアルド・ブライバンティは、教え子の青年エットレと恋に落ち、ローマで一緒に暮らしはじめる。しかし2人はエットレの家族によって引き離され、アルドは教唆罪で逮捕、エットレは同性愛の「治療」と称した電気ショックを受けるため矯正施設へ送られてしまう。世間の好奇の目にさらされる中で裁判が始まり、新聞記者エンニオは熱心に取材を重ね、不寛容な社会に一石を投じようとするが……。

「輝ける青春」のルイジ・ロ・カーショがアルド役で主演を務め、エットレ役には本作が映画デビューとなる新星レオナルド・マルテーゼが抜てきされた。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。

映画の視点がさだまらなくとっ散らかった印象を受ける。生物教師の教唆罪という視点に絞ったほうが良かったかも。まず教師との同性愛生徒は家族の問題があり、兄も教師と同性愛的な関係だったのか、そこが同性愛の三角関係になっているようで分かりにくくしている。このストーリーはいらなかったかな。

そして教唆罪という事件を調べる新聞記者も事件だけに専念すればいいのに恋人との関係とか余計なエピソードだった。教唆罪というのがよくわからないので、それを説明するシーンがあった方が良かったかな。いろいろ恋愛関係とか当時の社会状況や教師の思想(進歩的な前衛主義)がもう少し整理されて描かれていたらと思う。あるいは思い切ってカットするとか。生物教師が蟻の視線では優男なのに、演劇になると鬼教官になるのだ。あの演劇のシーンは必要だったのかな。芸術志向という生徒の問題を明らかにするためで最後のオペラ「アイーダ」に繋がったのだと思うが。監督が「アイーダ」好きなのはわかった。

予告編から感じるほのぼのイタリア映画から、恐怖のイタリア映画というすっきりした流れにしたほうが良かったかもと思う。電気ショックを与えるシーンは怖かったが。イタリアは今ではそういう精神病院が無くなったと聞く。そういう面も明らかにしても良かったかも。いつまでもファシストの国のイメージだった。監督もそれが狙いだと思うのだが。自由と権力の縛りという問題提起の映画。蟻の生態は、自由と反するような、そこの王となる生物教師だから矛盾が生じるのだと思う。もう一つの幻想なんだと考えればいいのか?折口信夫の世界のような。そっちは軍国主義と結びつくのだが。


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