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プルースト原作の映画

シャンタル・アケルマン『囚われの女』(フランス・ベルギー/2000)監督: シャンタル・アケルマン 出演: オリビア・ボナミー/シルヴィー・テステュード/スタニスラス・メラール

祖母とメイド、そして恋人のアリアーヌとともに豪邸に住んでいるシモンは、アリアーヌが美しい女性アンドレと関係を持っていると信じ込み、次第に強迫観念に駆られていく。マルセル・プルーストの「失われたときを求めて」の第五篇、「囚われの女」の大胆で自由な映像化。嫉妬に苛まれ、愛の苦悩に拘束される虜囚の境地をアケルマンは洗練された表現で描写する。ジャン=リュック・ゴダールの『軽蔑』(63)やアルフレッド・ヒッチコックの『めまい』(58)をも想起させるこの傑作は公開年の「カイエ・デュ・シネマ」ベストテンで2位に選ばれた。

プルースト『失われた時を求めて』から「囚われの女」を多少脚色した映画だけどほとんどテーマは同じ。ただ時代が現代(80年代ぐらい?)で祖母はその前に亡くなっているのに出てくる。あと主演の二人の名前も違っています。

原作のアルベルチーヌはアリアーヌで、これを演じたシルヴィー・テステューは薄幸そうな表情でイメージ通り、シモン(語り手)も病弱な青びょうたんのイメージ通りの感じでした。ただフランソワーズがイメージと違った。あと親友のアンドレはボーイッシュな感じでした。

アリアーヌを愛人として囲っているブルジョア青年は、愛人の行動が気になってストーカーのように付け回す。アンドレはシモンのスパイでアリアーヌを監視役なんだけどそれもよくわからない関係(レズビアン的)。アリアーヌは同性愛者なのだけどそれを隠してシモンの愛人になっている。

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原作と違うのは、アリアーヌを嫉妬のあまり付け回すストーカー男になっているところですね。これは「スワンの恋」のスワンの嫉妬愛に近い。まあ原作はスワンの憧れがあって、それをなぞっていく喜劇なので、この映画は悲劇的にしているのです。その脚本は成功していると思います。悲恋物語になっている。

何よりもシルヴィー・テステューのアリアーヌの謎めいている感じが、ちょっと不良っぽい中森明菜タイプかな。シャルロット・ゲンズブールの感じかも。

最初の海水浴のシーンがビデオじゃなく8ミリなんですね。その感じも回想シーンのようで良かった。女子たちの戯れを眺めている青びょうたんの青年の構図ですね。病気もちだからそこには入れないけどその女子たちの健康美に憧れる。それを金で愛人にする映画なんです。改装中の家もなんか不思議な感じ。古い家だから一見金持ちに見えないけど部屋数とか運転手付きの高級車とか。

避暑地はノルマンディーでした。その海の情景が最初は闇の海でその後に回想の明るい海水浴。そして、ラストも闇の海。海が一つのテーマとなっている。

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