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現実の枕落とし

『源氏物語 56 夢の浮橋』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第54帖「夢の浮橋」。横川の僧都から行き倒れていた女の話を聞き、浮舟に違いないと薫は涙する。僧都は出家させたことを悔やむが、会わせる事は出来ないと断る。代わりに浮舟の弟に手紙を持っていかせるが浮舟は自制して弟にも会わない。会えなかったと報告を受けた薫は落胆し、誰かの恋人になっているのではあるまいかなどと煩悶するのであった。

最後はあっけない幕切れ。まあこれだけの大作になると終わり方はどう終わっても文句が出そうだからこれでいいのかも。光源氏の終わりの手はもう一度使うのはあざといし、一応続きを予感させておいて、誰かが続きはあったのだが紛失したというような。タイトルが「夢の浮橋」って、どこが夢なのかわからんけど夢の目覚めはこんなもんだった。続きが見たかったのに目覚めてしまってみたいな。

薫はダースベーダーの如く追いかけてきてもうんざりだし匂宮が出てきてかき回されるのも上手くないし、小君が小君らしくて良かったと言えば良かった。「宇治十帖」も面白くないという人がいたが自分は面白かった。浮舟は良かった。

春の夜の夢の浮橋とだえして峰に別るる横雲の空 藤原定家 

新古今和歌集


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