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シン・俳句レッスン25

動物園の動物も暑いだろうな。冷房があるわけでもないし。夏休みとかなると氷のプレゼントとかやっているがあるのかな。確かペンギンがいたはずだ。ペンギンとかどうしているのだろう?熱帯性なのか?

今日は「ペンギン」で10句。

日本脱出したし皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも/塚本邦雄

これは短歌だった。

脱出したし日本のペンギン

パロディだから川柳だな。

川名大『モダン都市と現代俳句』から「新興俳句の精神とその系譜」

抒情的文体の秋櫻子と即物的文体の誓子

来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり  秋櫻子
啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々     秋櫻子
夏草に汽罐車の車輪来て止まる     誓子
マルクスを聴きて膝頭冷えまさる    誓子

日向水泳ぐペンギン温泉地

『新世紀エヴァンゲリオン』の「温泉ペンギン」を想像したのだが。

日影探す温泉ペンギン酷暑かな

これも抒情かな。無季の方がいいのか?

避難訓練ペンギン戸惑う酷暑かな

無季俳句は難しい。今の社会性を詠む必要があるのか。

マスク舞うペンギン池に水母かな

やっぱ季語がはいってしまうな。

抒情的文体の系譜。秋櫻子→不器男→窓秋→破郷→鳳作

白藤や揺りやみしかばううすみどり  不器男
散るさくら海あをければ海へちる   窓秋
プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ  破郷
月光のおもたからずや長き髪     鳳作

即物的文体の系譜。誓子→三鬼→白泉

右の眼に大河左の眼に騎兵    三鬼
繃帯を巻かれて巨大な兵となる  白泉

戦火想望俳句的に

ドローン襲来逃げる皇帝ペンギンか

窓秋と新興俳句五人男(鳳作、赤黄男、白泉、三鬼、東京三)と二人女(藤木清子 東鷹女)

むさしのゝ空真青なる落葉かな  秋櫻子
わが思ふ白い青空ㇳ落葉ふる   窓秋
頭の中で白い夏野となつてゐる  窓秋

(新感覚・詩情の俳句)
しんしんと肺碧きまで海の旅   鳳作
恋人は土龍のやうにぬれてゐる  赤黄男

(深層意識・心理主義の俳句)
水枕ガバリと寒い海がある   三鬼
子を殴ちしながき一瞬天の蝉  東京三(秋元不死男)
夢青し蝶肋間にひそみゐき   喜多青子

(イロニイの俳句・社会性俳句)
提灯を遠くもちゆきてもて帰る  白泉
占領地区の牡蠣を将軍に奉る   三鬼
鉄工葬をはり真赤な鉄うてり   細谷源二

(フェミニズムの俳句)
戦争と女はべつでありたくなし     藤木清子
爆撃機に乗りたし梅雨のミシン踏めり  東鷹女(三橋鷹女)

フェミニズム俳句に挑戦。

ペンギンの子育てイクメンかな

新興俳句の継承・戦後派俳人

身をそらす虹の
絶巓
    処刑台  重信
風下の  
森の奥の
老いの激しき
かたつむり   重信

鉛筆の遺書ならば忘れ易からむ  紀音夫
黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ   紀音夫

昭和衰へ馬の音する夕かな   敏雄
戦争と畳の上の団扇かな    敏雄

衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く  桂信子
春月の木椅子きしますわがししむら  桂信子

多行俳句

彷徨い
歩く
ペンギン

酷暑
かな

三橋敏雄の十句

何処かに水葬犬が嗅ぎ寄る秋の海  『まぼろしの鱶』
新聞紙すつくと立ちて飛ぶ場末   『まぼろしの鱶』
富みて老いたる観光団発つ空中へ  『まぼろしの鱶』
死して師は家を出て行くもぬけの春 『まぼろしの鱶』
曳かれくる鯨笑つて楽器となる   『まぼろしの鱶』
昭和衰へ馬の音する夕かな     眞神
日にいちど入る日は沈み信天翁   『眞神』
草荒す真神の祭絶えてなし     『眞神』
たましひのまはりの山の蒼さかな  『眞神』
絶滅のかの狼を連れ歩く      『眞神』

「水葬犬」は犬が水葬されるわけではなく水葬を嗅ぎつける架空の犬がいるということらしい。「秋の海」は静かな海か?

即物的な「新聞紙」の句。わかりやすくていいと思うのだが、「新聞紙」が音律の裏付けがないと白泉の言葉。難しい。

「冨て老いたる」の諧謔性。これは戦没者遺体収集の時の句だそうだ。そういう背景を知ると「空中へ」が重いな。

西東三鬼の追悼句だという。他に「万寓節や西東三鬼その後留守」があるという。

鯨の句は格調高いと思う。「共に泳ぐ幻の鱶僕のように」とあるので、鯨は師である西東三鬼なのかもしれない。『まぼろしの鱶』は三鬼没後四年目の三鬼忌。

『まぼろしの鱶』を刊行して現代俳句協会賞を受賞したが敏男はさらに高みを目指していたという。「神の視点」か?

「信天翁」ボードレールを踏まえているのか?踏まえているとしたら、ランボーとヴェルレーヌの永遠の海も連想される。

「真神」は絶えてしまったと詠む。同人だった大岡頌司の『眞神』。そうなると偽の神か?三鬼はディオニソス的のような気がする。グノーシス的なのかもしれない。

「たましいの」の母音は「ああいいお」中七は「ああいおああお」下五が「あおあああ」という音律で統一感があるという。この「たましいの」は読者の共感を呼び起こす呪術性を持つようだ。山に囲まれて心満たされるという池田澄子の注解。

この「狼」は象徴である。池田澄子は「新興俳句」のという。「新興俳句」が権力によって祀りさられたことを顧みてか?「狼」のディオニソス的な仮面は西東三鬼なのかもしれない。白泉という純粋形態の「新興俳句」を祀り去ったのは権力と共に盟友の西東三鬼でもあったのだ。

例えば「信天翁」でフランス象徴派の詩に触れながらランボーとヴェルレーヌの訣別を暗示させる。三橋敏雄は早熟の天才俳人と言われた男でランボーと重なる。そして西東三鬼はもう一人の師であり彼はディオニソスの「鬼」なのである。

『眞神』という題名の裏にグノーシス的神を見出したならば、鬼神という西東三鬼が立ち上がるような。そして「狼」はそんな彼と共に歩いた三橋敏雄なのかもしれない。第一句集が「鱶(ふか)」だったのだ。

NHK俳句

奇しくも「秋刀魚」の本意の回だった。「秋刀魚」というと煙や大根おろしという本意が付いてくるが、それを思うのは凡人であり、それをどうズラして表現するかということらしい。

秋刀魚焼く後片付けが大変だった
秋刀魚焼くカボス付き大根おろしの夢

最初は秋刀魚の油を含んだ煙が見えてこない(散文だし)。むしろネガティブさが共感力に欠ける。後の句も夢だからネガティブさが出ているのだが夢としたことで煙のように消えてしまう秋刀魚の本意はズラしているのかもしれない。まあ大根おろしとカボスそのままは凡人だった。

秋刀魚焼く煙で一杯月夜かな

入選句は「タクシーより七輪と秋刀魚六匹」という贅沢な俳句だった。そこに見えてくる昭和の家族像とか保守性は夏井いつき好みの物語のような気もしてくる。あといつき組という取り巻きがいるのだった。まずそこから入っていかないと無理なような気がする。内輪なんだよな。

 村上鞆彦さん「秋晴」、高野ムツオさん「虫」~9月4日(月) 午後1時 締め切り~ https://forms.nhk.or.jp/q/IP6RDN72


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