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脱北者の彼女が女優になろうとした理由は?

『ポーランドへ行った子どもたち』(2018/韓国) 監督:チュ・サンミ 出演:チュ・サンミ/イ・ソン/ヨランタ・クリソヴァタ/ヨゼフ・ボロヴィエツ/ブロニスワフ・コモロフスキ

解説/あらすじ
監督のチュ・サンミは、出産後に子どもへの愛着や不安のために産後うつを経験する。そんな中、彼女は偶然目にした北朝鮮の孤児たちの映像をきっかけに、秘密裏にポーランドへ強制移送された戦災孤児たちの記録を知る。1950年代、自国も厳しい情勢下に異国の孤児たちを我が子のように受け入れたポーランド人教師たちと、彼らを「ママ」「パパ」と慕う朝鮮の子どもたちがいた――。チュ・サンミは、脱北の過去を持つ大学生イ・ソンとともにポーランドを訪問し、いまでも子どもたちを懐かしく思い涙を流す教師たちと出会う。あのとき彼らは何を思った のか。その後朝鮮に送り戻された孤児たちはどうなったのか。そして旅の途中、イ・ソンは泣きながらいまも北朝鮮にいる家族のことを語りはじめる。

これも号泣映画。ノン・フィクションということもあるが監督がポーランドへ取材に連れて行ったのが脱北者の女優の卵。オーディションで(このドキュメンタリーとは別の北朝鮮もの映画のオーディション)、他の脱北者の人は辛い過去を話して号泣するのだが、彼女は始終明るく振る舞う。号泣脱北者は演技がトラウマになるとか言ってプロデューサーから避けられたのだ。そして見事に女優として選ばれた。

監督も子育てに悩むこともあり、そんな時に朝鮮戦争時にポーランドへ送り込まれた子供たちの本を読んで、調査をすることになった。その撮影に彼女を誘う。彼女がなかなか心を開かないから、そういう(心を開く)ことも必要なのだろうと考えたのだ。

彼女は生死の問題以上に中国での辛い経験があったのだ。言わないけどわかる人にはわかると思う。誰にも言えない心の傷を負って、あえて明るく振る舞うことで韓国で女優を目指していた。そこだけどもけっこう辛い話だが、ポーランドに送られた子供のその後の話も辛い話。

まず北と南両方から送られてきたと寄生虫の検査で明らかになる。ポーランドにはいない寄生虫で肺を侵されるのだ。しかし、呼び戻されるのは北の子供たちだけだった。彼らは労働力として必要とされた。子供たちはその社会を薄々感じていて帰りたがらなかった。

ポーランドでは、家族的にママ、パパの関係で彼らの心を開いていく。それは彼らもアウシュヴィッツを経験した孤児だった辛い経験があるからだ。それでもポーランドの先生たちは、彼らを北朝鮮に返さねばならない。

その北朝鮮から子供たちの手紙が来るのだが、けっこう辛い内容ばかり。先生たちは北朝鮮に馴染むようにと手紙のやり取りも中断してしまう。後から彼らの死を知ることになる。

病気で残された子供のためにみんなが輸血をしたが助からなかったという話。その身代わりにポーランドで生まれた朝鮮の子供が引き渡された話。脱北者の彼女と重なる辛いさがある。そこはちょっとと思えるのだが。彼女が明るく振る舞うだけに辛さを抑圧しているのがわかる。

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