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リトルというより偉大なロックミュージシャンのドキュメンタリー

『リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング』(2023年製作/101分/アメリカ)監督: リサ・コルテス 出演: リトル・リチャード/ミック・ジャガー/トム・ジョーンズ/ナイル・ロジャーズ/ノーナ・ヘンドリックス/ビリー・ポーター/ジョン・ウォーターズ

ロックンロールの創始者のひとり、リトル・リチャードの知られざる真実と素顔に迫ったドキュメンタリー。

1955年、デビュー曲「トゥッティ・フルッティ」の大ヒットで彗星のように音楽シーンに現れた黒人アーティスト、リトル・リチャード。反権力志向の若者たちの心をつかんでヒット曲を連発するも突然引退を宣言し、5年間にわたる“教会への回帰”を経て、復帰後はイギリスツアーを通じて無名時代のビートルズやローリング・ストーンズに決定的な影響を与えていく。当時のアメリカでは南部を中心に人種差別が激しく、さらに彼はゲイを公言する性的マイノリティーでもあり、陽気なキャラクターを演じつつも壊れやすい繊細な魂をもつ人物だった。

差別と偏見、時代と流行、信仰と音楽活動など、さまざまな狭間の中で苦悩し闘い抜いた彼の魂の軌跡を、本人および親族・関係者、識者の証言や豊富なアーカイブ映像、さらにミック・ジャガー、ポール・マッカートニーら著名ミュージシャンの証言映像を通してひも解いていく。

リトル・リチャードのドキュメンタリー映画で、ミック・ジャガーが影響を受けたとかビートルズが前座だったとかのエピソードは知るけど詳しくは知らなかった。彼の演奏を観たのは最近のドキュメンタリー映画で『リバイバル69 伝説のロックフェス』でキラキラの衣装で登場していたがすでに時代遅れのスターだとばかり思っていた(偉大さを知らなかった)。

彼が最初のロックスターだったのは、規定路線から外れた異端児であった故に彼に憧れてプレスリーやパット・ブーンなど白人に真似されたが元祖ロックスターはなかなか理解されなかった。それは彼が黒人でクィアであったことなのだ。

それを打ち破るために誰よりもスターであることが必要だったのだと思うが、彼を真似た白人に歌を奪われて彼は理解されずにいたのだ。もともと教会音楽から入った彼は、自身の生き方を否定するようになり、よりキリスト教徒らしくなる。ある日終末論的な夢を見て聖書に目覚めるのだった。そして、ロックが悪魔の音楽と言われ、コカインとかやっていたこともあったのかもしれない。極端な性格である彼は一方で破天荒な生き方を求めるのだが、その一方で模範的な神の道を探るのである。

そんなドキュメンタリーなのだが、一番はそれまで賞に恵まれなかったことでグラミー賞にはこだわっていたようだ。彼にしてみれば彼を真似たロックスターが次々に受賞するのに、ロックを作った自分は表彰されない。さらにキリスト教徒になったために音楽活動より布教活動に力を入れ始めたので収入が無くなってしまったのだ。レコード会社の契約もいい加減なもので彼に印税が入らなかった。そのことが余計にピエロ的で笑われてしまう。それでも歌うことは止めずに最近まで、2020年の死ぬまで音楽活動をしていたと知った。

もう少し演奏風景とかあると良かったのだが、元祖ロックスターの偉大さを改めて知った。クィアだということは知らなかったな。

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