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幸せの黄色い風船

『とべない風船』(2022年/日本)監督・脚本:宮川博至 出演:東出昌大、三浦透子、小林薫、浅田美代子、原日出子

解説/あらすじ
豪雨で家族を失い心を閉ざした主人公が、人生に迷い疎遠になった父親に会いに島にやって来た元教師の女性と出会い、家族でも恋人でもない二人の永遠に晴れそうにない心の行方を、多島美が連なる瀬戸内海の故郷を舞台に描いた感動作。

coco映画レビュアー

三浦透子も先日観た『そばかす』よりもこっちのほうが良かった。『そばかす』は『ドライブ・マイ・カー』の自立したドライバーからすねかじりの三十路女になっていた。

それがこの映画では東京で教師をしていたが躓いて島に帰ってくる、そして島での経験を通じて新たに再生していく映画で弱さと強さを見せているのだ。

それは東出昌大のめそめそ泣く男にも言えることで、やせ我慢の部分がありながら一人でわんわん泣くような弱い男を演じているのだが、共同体の中では頼りがいのある男として描かれている。これは「浪漫主義」的な映画で、リアリズムよりは事故で妻と子供を亡くした男のドラマで、そこに『幸せの黄色いハンカチ』のオマージュ的な映画愛が感じられた。東出昌大も『天井の花』の男尊女卑の三好達治役よりよっぽど人間味があって良かった。

共演陣も小林薫の暖かさや最近おばさん役がハマり役の浅田美代子も存在感があった。そして何よりも面白いな、と思うのは幽霊役とも言える原日出子が手紙のシーンだけで泣かせる。そのシーンが良かった。

三浦透子も今までは違った役でクールな演技よりは情の人になっていたが、そういう映画としてそれまでとは違った役作りだったと思う。

それと子供を絡ませるのはずるいと思うんだけど女の子が可愛から許せるかな。瀬戸内海というのも良かった。行ってみたくなる映画。


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