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ポーシアは怖い女性だ

『ヴェニスの商人』 シェイクスピア (著), 中野 好夫 (翻訳)(岩波文庫 )

シェイクスピア(1564‐1616)の喜劇精神がもっとも円熟した1590年代の初めに書かれ、古来もっとも多く脚光を浴びて来た作品のひとつ。ヴェニスの町を背景に、人肉裁判・はこ選び・指輪の挿話などをたて糸とし、恋愛と友情、人情と金銭の価値の対照をよこ糸としているが、全篇を巨人のごとく一貫するユダヤ人シャイロックの性格像はあまりにも有名である。

それほど面白いとは思わなかった。シャイロック人肉裁判のシーンは、TVアニメ『一休さん』で結果を知っていた。ユダヤ人差別の問題があるが、時代的なものだろうと冷静に読んでいた。ユダヤ人のシャーロックの扱いが酷すぎるという話だが当時のユダヤ人が置かれた状況と、ヒトラーが弾圧したユダヤ人差別の火元の状況は見て取れる。確かにジュウという言葉ばかりで気になるのだが。

ポーシアが法学博士に変装して、婚約指輪をバッサーニオから奪うシーンの方が印象的だ。騙されるほうも騙されるほうだが、試す方も最初からそんな疑いがあるのなら、この結婚生活も上手く行かないだろうと思ってしまった。尻に敷かれるのは確実。

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