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ブタクサやくさめ、くさめ、とエヴァンゲリオン

この時期に花粉症が酷いのはブタクサなのか。目がかゆいしくしゃみばかり出る。マスクをすると多少は効果があるのだが、鼻水が流れてくる。読書に集中出来ないのもそのせいかもしれない。

『魔の山』は50p.ほど。ハンスが恋の病いと風邪を引いて熱が出たためにサナトリウムに留め置かれてしまうのだった。37.6度だからそれほど高熱ではないが、自覚症状があり、恋の病いも重なったているので、受け入れざる得ないのだが、サナトリウムの人々からは歓迎を受ける。高山なので風邪のウィルスはなく、風邪などひかぬはずだという病院の論理。それは結核の疑いがあるということなのか?

まず正確な熱を測るために婦長から体温計を買わされる。そのサナトリウムではどこでも体温計が売っているが婦長から買わされる体温計は高いという。そういえばコロナ禍だったときに体温計がなかなか手に入らなかったのは今ではどこでも買えるようになったのかな。体温計は一本あればいいので、その時期に体温計を買った人も多いはず。今はマスクも過剰気味で安く売っているよな。

体温を計ったら36.3度だから平熱だった。やっぱ花粉か?昨日から急に症状がひどくなっていた。それでも昨日は河川敷を二駅の散歩。河川敷を通るのは駅まで遠回りになるのだが、比較的平坦で桜並木も木陰を作っていて歩きやすいのだった。最後の登り坂の15分ぐらいがキツイのだが、だんだんそのキツさも辛くなっていた。

『魔の山』はあと三日ぐらいで読めるかな。100p.のノルマを達成すれば返却期間内に返せるだろうが、なかなか進まないのだった。

もう1冊は『未来のイブ』でこちらは75%超えた。今日中に読めるな。大失恋した貴族のための人型アンドロイドなのだが、ストーリーとしては象徴主義からの影響を受けていて精神世界の小説と言える。アンドロイドと人間を分かつものはなにか?精神ということなんだが、女性にはその精神性が欠けるからアンドロイドで理想形を作れるというエジソンの説明だった。それは女性は動物的に欲望のために着飾ったり化粧したりするのだが、そういうのはアンドロイドで代用出来るということだ。ただ精神性だけは与えられないが、それはごく簡単な応答能力だけ与えれば十分通用するということなのだ。

例えば瞳の色ではなく視線という仕草で女性は媚を売ることが出来る。大事なのは曖昧にさせておく視線というもので、物思いに感じさせる首の角度の方が重要だというわけだった。そうしたアンドロイドの取説的な仕様書が延々と続くのだった。最初貴族が失恋して、死にたいということから、エジソンがそれではいけない、エジソンを援助してくれた貴族の人であればその精神性が失われるのは惜しいということで、失恋のもとになったアンドロイド作成をするのだが、ストーリーとしては理想的なアンドロイドは精神性よりも物真似程度でいいという。そのためにAIは録音機と映写機の役目として制作すればいいというエジソンの考えなのか。そこに電気はアンドロイドに命を吹き込む媒体であり、その電気でも特別な通信回線みたいなものがあるのだが、それは秘密だということだった。今のネット社会のようなものを考えれば納得いくのかな。ほとんどこのアンドロイドはAIと言っても良かった。そして精神性はむしろ相手が想像することで、コミュニケーションが成立するのであって、そこに複雑な精神性はいらないということなのだ。

これは「エヴァンゲリオン」みたいな話で、エジソンはその精神性を邪険に扱うのだが、実際にこのアンドロイドに精神性が宿ってしまったという話なのだと思う。それは魂という外部の生命体、宇宙的な精神みたいな、そこに神学的な神秘主義があるので、もともと神が人間を作ったのも似姿としてのコピーだったわけで、アンドロイドもそうした代物なのだ。

SFというよりも神秘主義神学の内宇宙というはなしでイギリスのニューウェーブ系のSFみたいな文学的SFなのだが、ディックの世界に近いのかもしれない。だから「エヴァンゲリオン」をそこに読み取ってしまうというような。

エジソンはゲンドウであり、アンドロイドは妻であるユイをモデルとした綾波レイだった。そこにアンドロイドの精神性が問題となり、電気エネルギーが精神性を生み出すというような小説なのかな。フランケンシュタイン博士がエジソンということだった。そこにポーなどのフランス象徴主義の精神性が入ってくる。各章のエピグラフがほとんど文学からの引用で、それに沿って(真似て)物語を進めていくという方法が面白いかも。エピグラフは象徴として深読みするように誘導される。そこに『ファウスト』やボードレール『悪の華』の引用があるのだった。『聖書』とかも多い。読書もそうした引用から過剰に意味性を読み込んでしまう。それが精神だみたいな。

だから文学機械としてのAIみたいな小説になっているのだろう。ブタクサに悩ませながら人間を考えていた。

今日の一句。

ブタクサでくさめして人間か  宿仮

ブタクサは季語なのか?くさめはクシャミの古語なのだが、それは呪文であるという。クシャミをすることで魂が抜け出てしまうので呪文として「くさめ、くさめ」と言ってそれを防ぐのだという。

ブタクサやくさめ、くさめ、でエヴァンゲリオン  宿仮

今日の一首。

花粉症
くさめ、くさめと
ブタにされ
エヴァンゲリオンよ
人型の祈り

映画『碁盤斬り』を見た。


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