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『源氏物語』の「もののけ」は当然の感情である。

『源氏物語 A・ウェイリー版2』紫式部 ,アーサー・ウェイリー(翻訳),毬矢 まりえ(翻訳),森山恵(翻訳)

徹夜で読了しました(瀬戸内寂聴)
まるで「ベルばら」の王朝ロマン(斎藤美奈子)

明石の地に流れていたシャイニング・プリンス、ゲンジの運命は一転!
我が子をエンペラーに昇らせ、恋人たちを建てたばかりの新御殿に住ませ、我が世の春を謳歌する!

100年前、ヨーロッパ中を夢中にさせたアーサー・ウェイリーの名訳を、再び現代語に訳し戻ったとき、
蘇ったのは、恋に生き、愛に涙する女性たち、運命の変転と格闘する男性たちの生々しいまでのドラマだった。大好評
、話題のリーウェイ版源氏物語、第2巻刊行!された都に再び迎えられたゲンジは、苦戦彼を睨みつけるコキデン(弘徽殿)を尻目に、知られざる我が子レイゼイ(ゲンジの母ツボフジの子とされている)を帝位につけ、につきの栄華をそのままにしてほしい。内大臣として権力を一時的に、パレスに勝っても劣らない大御殿を造営し、縁を結んだ女性たちを住ませて、エグザイル(明石への流れ謫)で途切れた交際を再開してゆく……。最高を極め、徐々にと女性たちと付き合いながら、父としても、人生の充実をよろしくゲンジ。トウノチュウジョ。ゲンジの娘を抱いて、不安と希望を胸に都に誘われてゆく明石のレディ。そろそろ恋を経験する、ゲンジと青オイの子・ユウギリ。エンペラーから乳母(レディ)まで、様々な人びとの人生が交錯する華やかなりし18帖。紫式部入魂の物語論が展開される一冊、「ピクチャー・コンペティション(絵合)」など、読みどころに充実した第2巻を、ちょっとエキゾチックで読みやすい日本語にお届けします。巻末に瀬戸内寂聴さんのエッセイを収録。現代語訳全10巻に人生をかけてだときから遠い昔、女子学生時代の寂聴さんの、ウェイリー版源氏物語とのエピソードを明かしてくださいました。

橋本治『窯変 源氏物語』と平行して読んでいるので、橋本源氏に比べてすいすい読める。鏡餅が「ミラーケーキ」とか、「ゴセチ・ダンサーズ」(舞姫か?)とか英訳が相変わらず面白い。花や鳥などは日本のものよりもイギリスで馴染にあるものに替えていたりして興味深い。鶯→ナイチンゲール、葵→向日葵とか。とくに和歌などは噛み砕いてイギリスのわかりやすいものに喩えていた。

和歌は英語だと説明的(詩であるよりも散文)になるでわかりやすいのはわかりやすいかも。原文も載っているので、その差異も面白いと思う。

息子世代になると同じことでも喜劇的になるようで、そのへんもスラスラ読めた。夕霧の愚鈍さは光源氏があまりにも現実場馴れのスーパースターだからちょうどいいのではと思う。より現実的だ。吉本隆明『源氏物語論』ではそのへんは作者である紫式部の心境(環境)の変化にあるという。光源氏の物語はファンタジーで良かったのだが、夕霧世代になると現実的なことを書かざる得なくなってきた。

玉鬘が髭黒とくっついたのは、良くわからなかった。女性の運命は女性が決められるものでもなく、そのへんは非情な運命にあるのだ。それにしても紫式部は髭黒のことを悪く書きすぎだと思ってしまう。誰も幸せにならない結末だった。

惨めなのは元妻で「もののけ」が憑いたとかでエクソシスト(悪魔祓い)を呼ばれてしまう。『源氏物語』の「もののけ」は同情してしまうものが多い。今の時代なら「もののけ」ではなく当然の感情だと思うのだ。それを「もののけ」のせいにしなければならない悲劇がある。まあ、この巻で一番面白かったのは近江の君なんだけど、近江の豪快な性格には救われる。宮廷生活はとても無理そうだが。


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