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ロマの音楽と踊りに浸る映画

『ジャム DJAM』(2017年/フランス・ギリシャ・トルコ合作)【監督】トニー・ガトリフ 【キャスト】ダフネ・パタキア,シモン・アブカリアン,ヤニス・ボスタンツォーグロウ,エレフセリア・コミ

ロマの人々をテーマに映画を撮り続けてきたトニー・ガトリフ監督が描き出す、自由奔放なガールズ・ミュージカル・ロードムービー。古代ギリシアの詩人、サッフォーの伝説が残るレスボス島、どこまでも青いエーゲ海、さらには美しいイスタンブールの街並。歴史の刻まれた景色を、そこに育まれた文化とともに映し出す本作の主役のひとつはジャムが歌う、ギリシャのブルーズとも言われる音楽、レベティコ。音楽を愛し、音楽と生きるジャムと周囲の人々の魂の底から溢れ出す歌と踊りは、彼らの喜びや悲しみに寄り添いながら、生そのものをのびやかにうたいあげる。大胆不敵な主人公、ジャムを演じるのはポール・バーホーベン監督の『ベネデッタ』(2021)、レア・ミシウス監督の『ファイブ・デビルズ』(2022)に出演、近年最も注目される女優ダフネ・パタキア。劇中の歌は全て本人が披露しているほか、レベティコを演奏する楽器やベリーダンスも習得し、野生的なエネルギーを漲らせて輝くヒロインを見事に体現。ジャムを見守る継父、カクールゴス役には『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)、『レストレス』(2022)などの映画、舞台で活躍するシモン・アブカリアン。

音楽とダンスをこよなく愛するギリシャ人の女性ジャムは、レスボス島でレストランを経営する元水兵の継父、カクールゴスとふたりで住んでいる。ある日、船のエンジン部品を調達するため、カクールゴスの代わりにトルコ・イスタンブールへ出かけることに。そこで彼女はフランスから難民支援のボランティアに来たアヴリルと出会う。
喧嘩あり、出会いあり、涙あり、笑いあり・・・・・・
そして音楽に満ち溢れた、ふたりの波乱万丈の旅が始まった!

トニー・ガトリフ監督は以前観たて『ガッジョ・ディーロ』(これも再演される)が良かったので未見の『ジャム DJAM』の方を観た。ロマの娘の奔放さとそれに呆れながら行くところがないパリ娘。パリ娘は人助けのボランティアに来ていたのだが彼氏と別れ別れになって途方に暮れていたのだ。

パリ娘の自分探しの旅とロマの娘の根源性(それがロマの踊りと音楽だった)を描き出す。ロマの漂泊性がテーマとして浮かび上がってくるのだが、ナチス時代の人種差別も。

彼女の母親がロマでパリに出てきたときにレストランを手伝うようになって、そこで歌ったあらゆる民族の人たちが聞きに来て賑わっていたのだ。それは彼女の歌が故郷を思い出させるからで、やがてパリはナチスの支配となり歌えなくなった彼女も病んで亡くなってしまう。その娘を引き取ってレスボス島(ギリシア?)に逃げてきたのが船主のおじさんで、そこでレストランを開いているのだが、そこも追い出されてしまうというストーリー。

その座礁した船を動かすための部品を調達するためにロマの娘が国境を超えて行くのだが、そこでパリ娘と出会って様々なトラブルに巻き込まれるというのが大まかなストーリー。ロマ娘のダフネ・パタキアの魅力的なダンスと歌で持っている映画なのだが、この娘が大胆で笑ってしまう。爺さんがナチスの協力者だというんで、墓にズボンをおろして小便をかけたりするのだ。また金がないと率先して身体を売りに行く。そういう性格がパリ娘には理解できないのだが、ロマが受けた差別や移民の座礁した姿(多くが死んで船の中に閉じ込められていたとか)を知って、自分のボランティアの無力さを感じていくというようなストーリー。ラストは座礁した船が動いて、また新たな旅に出発するという希望を描いているのだが。

ストーリー以前に歌と踊りが魅力的でそういう音楽が好きな人は楽しめる映画だと思う。駅のホームで踊りだすと突然音楽が流れてミュージカル風になるのはインド映画みたいだった。そういうのにも影響を受けているのかな。

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