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匂い爭い

『源氏物語 44 匂宮』(翻訳)与謝野晶子( Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第42帖「匂宮」。光源氏亡き後、その美貌を引き継ぐのは帝の第三の宮・匂宮と、源氏の若君・薫だった。薫には生まれつき高尚な香りが備わっており、対抗する匂宮は香を焚きしめ「匂う兵部卿、薫る中将」などと世間は囃し立てた。恋愛を楽しむ匂宮とは正反対に、薫は何事にも熱情を持てない。それは自分の出生に秘密があるのではと悩んでいたからだった。

最初に光源氏を継ぐような美しい者はいないとして、やる気のない出だし。ただそこそこ美しいのは光源氏の息子である女三宮が産んだ薫(中将)と孫である今生帝と明石の中宮(姫)が産んだ匂宮(三宮)だった。この二人がライバル関係であることは間違いないのだろうが、二人共匂いに関係する名前である。薫は香を焚くのではなく自然の体臭だった。いい匂いってなんだろうか?と想像する。ライバルである匂宮は、その匂いに負けないように六条院の庭の花木で様々な香を調合するのだ。

それと光源氏の息子が中将で孫が宮である点も注意すべき点だろう。忘れてはならないのは薫が光源氏の子ではなく柏木の子だったということである。最初からこの二人にはハンデがあった。

上下関係が厳しい時代である。光源氏の物語から中将であるほうが跡取りらしいが。それは夕霧が身分の低いところから始めたことからもわかるのだが、夕霧は雲居の雁と落葉の君との間を交互に15日づつ通っているという。それでも心の中では紫の上の面倒が見られないのは残念だったなどとほざいていた。夕霧のそういうところが好きだ。

そんな夕霧だがあろうことか雲居の雁と落葉の君以外にも藤典侍に子供を産ませていたのである。夕霧の子だくさんは誰の血筋なんだ?それに15日ずつ雲居の雁と落葉の君の間の行き会の隙間の時に子供を産ませるのだから凄い精力と言わざる得ないだろう。その六の君(六人も産んでいる!)を薫の嫁にと思っているのである。ただ薫は自分の生まれがよくないこと(不倫出できた子)であるから、恋愛はなるべくしたくないと思っていた。

(薫)
おぼつかな誰に問はましいかにしてはじめも果ても知らぬわが身ぞ


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