見出し画像

『牛久』へようこそ

『牛久』(日本/2021)監督トーマス・アッシュ

解説/あらすじ
在留資格のない人、更新が認められず国外退去を命じられた外国人を“不法滞在者”として強制的に収容している施設が全国に17か所ある。その一つが茨城県牛久市にある“東日本入国管理センター”、いわゆる牛久。この施設内には、紛争などにより出身国に帰れず、難民申請をしている人も多くいる。本作は、厳しい規制を切り抜け、当事者達の了解を得て、撮影されたもの。 “隠し撮り”という手法で、面会室で訴える彼らの証言を、記録し続けた。

『チェチェンへようこそ』の後に見ると、日本の税関で行われていることこそチェチェンなのだ。そうした恥ずかしい国家になってしまった現実を受け止めなければならない。

なによりもこれを撮影したのがトーマス・アッシュ監督は、プロのジャーナリストでもなければ映画監督でもない。難民支援のNPOをやっていたキリスト教関係の人で、あまりにも税関の人権のなさに憤りを感じて撮影をしたのだった。隠し撮りが問題にされることが議論されるが、日本の法が国際的に守れていない(それを世界に向けて発信しているにも関わらず)のなら当然の行為だろう。

それだけの覚悟がなければ出来ないことであり、前に観た映画『チェチェンへようこそ』も法に反してやっているのである。まず法とは何かを考えるべきなのだ。法が絶対的に権力者のものでも国家のものでもない。だから法が変えられるのだ。国家のためにではなく市民のために。

ウクライナ難民を受け入れを平然とした顔で公言する首相にこそ、牛久を観るべきなのだ。それがなければ国際公約もただの戯言。そういう「おもてなしの国」だということだ。『牛久へようこそ』がタイトルには相応しいかも。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?